2015年4月1日に設立、Webサイトも公開となったのが「ホラー×テクノロジー=ホラテク」を売りとする株式会社 闇。しかし、多くのエイプリルフール・ジョークサイトと同一視されたのか、その存在が実在の会社であると広く知られるようになるまでは、数日を要した。
「もの凄く手の込んだ、ホラー会社(?)のWebページがある!」とネット上で話題となり始めたのは、エイプリルフールの熱も冷め始めた4月上旬。「ジョークだと思っていたら、マジらしい」と噂になった闇のWebサイトにアクセスし、スクロール・ダウンしていくと、おどろおどろしい雰囲気とともにうごめく蜘蛛、怪しげな警告文、そして衝撃音とともに突き出される手……。
スクロールにあわせて、次々と繰り出されるホラーギミックが「怖すぎるサイト」として話題を呼んだ
まさしく「ホラー」と「テクノロジー」をテーマとした、企業特性を一発でユーザーに伝える工夫が凝らされていた。
「遊園地のお化け屋敷のようなものを、新しい技術で作ってみたかったんです」と語るのは、株式会社 闇 代表取締役の頓花聖太郎氏。
頓花氏はWebデザイン、インスタレーション、アプリなどの企画・制作を手掛ける株式会社STARRYWORKSのアートディレクターも務めている。STARRYWORKSの社員旅行時に頓花氏が発案した肝試しイベントが発端となり、彼の熱烈な「趣味」が株式会社 闇という名の新事業としてたちあがった。
「社員旅行の前に、有志で企画し1週間くらいしか時間がない中で寝ずにホラーコンテンツを作りました。スマホのGPS機能などを利用した、謎解きと肝試しを組み合わせたようなものだったのですが、これが社長をはじめ他の社員からも好評で。そこから事業計画として進めてみるか、ということになりました」(頓花氏)
この肝試しイベントや、その後のプレイベントで使われたスマホ用アプリなどは、すべて株式会社STARRYWORKSのスタッフにより作られた。ひと通りの制作ができるスタッフが揃っていたことも、立案から起業へ至る過程では幸いした。
「ただし、株式会社STARRYWORKSは子供向けのアプリや絵本などの知育事業も手掛けていました。それらとホラーコンテンツが企業サイトの実績で共存しているのはいかがなものか? という懸念があり、じゃあ別会社として起業するか、と」(同)
スプラッタ的なものよりは、ジャパニーズ・ホラー的なじわじわとクる怖さへのこだわり。大きな音を出せば怖がらせやすくなるが、そればかりにならないよう、多くのホラー作品を参考にした。流血表現などもなるべく避け、日本人好みのホラーに仕上げるべく苦心したという。
「スマホアプリの指示に従って、振り向かないといけないけど、振り向いたら何か出てきそう……そういう想像力を掻き立てるような怖さです」(同)
コンテンツ制作の技術的問題は経験豊かなスタッフの努力により乗り越えられたが、困ったのが「スタッフが、ホラーを見るのが怖いというんです」。サイトやアプリを作るのはいいが、参考とすべくホラー映画を観たり、ゲームをプレイするのに難色を示されることもあったそうだ。また開発中の社内には、血まみれの人形などが転がる異様な光景も現れたとか。
話題のサイトは2週間で完成
こうしていよいよ「ホラテク」ベンチャーとして立ち上げられた闇。4月1日が設立日となったのは、新年度を迎える日なだけにきりが良いという理由もあったが、当然ながらWebが盛り上がるタイミングのエイプリルフールに合わせるという狙いもあった。
「社名も含めて、インパクトがあった方がいいだろうということで。社名は「闇」、Webのドメインは「death.co.jp」、資本金は「83(やみ)円」としました」(同)
徹底的なインパクト重視、ブランディングとしてこだわり抜いた立ち上げとなった。話題となったWebサイトの作り込みも、4月1日の立ち上げに間に合わせるべく約2週間ほどで仕上げられた。
ロゴデザイン、サンプル動画の撮影や、それに伴う衣装の手配、モデルの手配に動画編集、他にもサイト用の効果音制作など。またサイトを見れば一目瞭然な、スクロールに合わせざわめく文字や様々なアニメーションの作り込み。Web制作経験があれば、あれほどのギミックを盛り込んだサイトを2週間でゼロから作り上げる困難さは、想像できるのではないだろうか。この苦労と狙いが見事にハマり、Web上で話題となったのは前述の通りだ。
Webで認知が広がる過程では「こんなページがあるよ」と内容を告げずにurlのみを知り合いに教え、アクセスしてみると……という、ユーザー同士による「いたずら」にも使われていたという。
こうした反響を知り、Facebookやツイッターを活用したPRにも余念がない。6月8日には、ただ社名が書かれただけのように見える画像が、ツイッター公式アプリで閲覧すると、恐ろしい女の子の姿に変化する画像を公式ツイッターアカウントから投稿したところ、2万5千以上のRT数を記録した。
肝心の事業内容は、各種ホラーイベントやコンテンツの企画、開発。会社の立ち上げ時にはプレイベントとしてウォークラリー型の謎解き肝試しを開催し、その模様をYouTubeにアップすると、実際にイベントで利用したいという問い合わせが多数寄せられた。
「プレイベント時にはiPhone用の専用アプリを作り、iPhoneユーザーを招待して参加してもらいましたが、実際のイベントを行う際にはAndroid端末にも対応する必要がありますし、イベント中のスマホのバッテリー残量に対するケアなども必要になりますね。その他にもアプリに限らず様々なコンテンツを開発しており、すでに実際に動いているイベントなどもあります」(同)
その第一弾として、和製ホラー映画としておなじみ「呪怨」シリーズ最新作「呪怨 -ザ・ファイナル-」公開に合わせ、新宿バルト9にて6月6日から19日まで設置される「お化け屋敷 恐怖の呪怨部屋」へ技術協力を行った。
名作ジャパニーズ・ホラー最新作とのコラボ企画も実施された
夏以降も、各地のお化け屋敷はもちろん代理店から多数のイベント・オファーが殺到しており、「立ち上げ時は正直「仕事はあるのか?」と思っていましたが、今では断らざるを得ないほど問い合わせをいただいています」という状況だという。
「規模の大きな会社ではないので、小さな案件にまで対応するのは現状では厳しいです。ただ今後ノウハウや制作物が溜まって行けば、低コストで開発済みのプロダクトをリース提供するような比較的手軽なサービスも可能になると思います。テクノロジーの進化に合わせた、面白いホラー体験やイベントを作りだし、新しい共感を生み出していきたいですね」(同)
学園祭や社内イベント、結婚式の余興などで、闇が作りだした「ひび割れる鏡」や「手首からの手紙」が利用できるようになれば……多くの人々が恐ろしい「共感」を得ていくことになるだろう。
(取材・文/佐藤圭亮)
- 頓花聖太郎(とんか・せいたろう)
- 1981年生まれ。株式会社 闇代表取締役。デザイン事務所を経てアートディレクターとしてSTARRYWORKS inc.に入社。ホラー好き・お化け屋敷好きが高じ、2015年4月にSTARRYWORKSの子会社として同社を設立。ホラーとテクノロジーで新しい恐怖体験を作り出すべく日々奮闘中。株式会社 闇HP