【東海道新幹線放火】大阪・西成の住人が語る「林崎容疑者の気持ちはわかる」

第2、第3の模倣犯が現れる?(写真はイメージです)

「犯人の気持ちはわかる。自暴自棄になって誰か巻き添えにしたい思うこともあるから。年金をもらってんだって? 真面目なんだろうね、俺みたいに無年金だったら開き直れるんだけどな。亡くなった人は気の毒に思うけど……」

 6月30日、東海道新幹線で焼身自殺した林崎春生容疑者について大阪市西成区のあいりん地区「釜ヶ崎」の住人にひとりはこう話す。

 マスコミ報道で林崎春生容疑者(71)の半生が事件後、徐々に明らかになりつつある。若い頃は「流しの歌手」として歓楽街を根城にメジャーデビューを目指すも花開かず、その後はバスの運転手や清掃業などを転々。複数の消費者金融からの借金の返済にも追われていたという。

年金支給額月3万5000円ではとても食べていけない

「若い頃に年金なんて払えるのは、ちゃんとした勤め人とほんの一握りの事業で成功した人だけでしょ? 勤めを持ってない俺たちみたいな自由業の人間は、年金なんて若い時分は考えなかった。カネは借りればいい、返せなくなったら謝って待ってもらう。それくらいの考えでいたほうがいいでしょ」(大阪市西成区「釜ヶ崎」の住人・73歳)

 様々な背景を抱える人が集う町、大阪「釜ヶ崎」の住人たちは、林崎容疑者に厳しい姿勢を見せつつもどこか同情にも似た声を寄せる。

「年金を貰えるということは、若い頃、ちゃんと将来設計してたんだろ。真面目に生きてても報われないのが社会かもしれん。それにしてもちょっとヒドいと思わない? 年金を払ってもその戻りはほとんどないというからさ」(同・65歳)

 実際、65歳を超えて年金受給をした人のなかには年間30万円から多くても60万円程度という額の支給しかなく、とても生計が立ち行かないという人も少なくない。釜ヶ崎でもそうした低年金額の人が日雇い勤務出ているのが現状だ。

「ちょっと羽振りがよかったときに年金を払っていたんだ。今、毎月3万5000円ほどもらってる。でも、この額では生活はできない。国はそこに気づいてない」(同・70歳)

高齢者1人を若い世代が約1.3人で支える時代へ

 毎月の年金支給額が少ない、生活保護受給も認められない。そうなると働くしかないのだが高齢者を雇ってくれる職場は日雇いといえども少ない。

「若い時に年金を払えと言うんなら、年を取っても最低限の生活ができるくらいの額は支給してほしいね。もしくは住むところや食事代を国が負担するとか……。生活保護をもっと受けやすくする方法もある」

 高齢者はこのように嘆くが、進み行く少子高齢社会ではこうした要求に応えるのは難しい。内閣府の「高齢社会白書(2015年版)」によると、1950年時点では約12人の若者が1人の高齢者を支えていた。しかし2010年時点では約2.8人で。人口比による試算では2060年には約1.3人で1人の高齢者を支えることになる。

「高齢者に手厚い社会──年金の支払額を増やし、消費税を大幅増税するしかありません。それが市民の皆様に理解して頂けるのかどうか」(厚生労働省関係者)

 これまで光を照らされることがなかった高齢者福祉の実態にはからずも光を照らすこととなった東海道新幹線放火事件。釜ヶ崎の住民の話を聞く限り、今、国と地方自治体が手を打たなければ第2、第3の事件が起きかねない。急ぎ手を打つことが必要だ。

(取材・文/川村洋)

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