週刊少年ジャンプ『レディ・ジャスティス』連載打ち切りの理由を考察|架神恭介コラム (2/2ページ)

デイリーニュースオンライン

どうでもいいから早くヒロインを辱めろ

 問題は前者で、上のまとめで×印が付いている7~12話の爆弾魔編では、「ダークナイト」のオマージュであろう「助けられるのは一方の人質だけ」といった罠が仕掛けられました。しかし、この一連の流れは個人的には非常につまらなかった。

 まずもって、無敵のヒロインに対して「正義感を盾に人質を取る」という手法が当たり前すぎるし、この罠の解決策もあまりスマートとは言えません。爆弾魔との戦いはちょっと面白かったですが(全力で殴ると爆発して危ないけど、ある程度のパワーで殴る必要がある敵に対して、算数の問題を解くかのように計算しながら殴る奇妙なバトル)、その後に出てきたライバルキャラは魅力的とは言えず、「そんなヤツのことはどうでもいいから早くヒロインを辱めろ」と思わざるを得ませんでした。

 エロいのがいい、とかそういう問題ではなくて、「この漫画でしか見れないもの」の問題なんですよね。この漫画のオリジナリティは「無敵なのに服は破れるから恥ずかしいヒロイン」です。それっぽいライバルキャラとか、人質を取っての卑劣な罠とかは、どの漫画でも出てくるからどうでもいい。もちろん毎回同じパターンでは読者は飽きてしまうのですが、飽きる飽きない以前にそれは求めていないんだ!!!

バカバカしさが足りない

 とはいえ、打ち切りの理由は爆弾魔編の退屈さではなく、全体的に上品すぎたことだと思います。ヒロインの服を破いて辱める漫画で上品ってなんだ、と思われるかもしれませんが、言い換えればバカバカしさが足りなかった。

 面白い要素はあるのに描写が上品なんですよね。「ここが面白いんですよ!」と声高に叫ばないというか。突き抜けたダイナミックなバカ描写で、有無を言わさずに「なんてバカなんだ」と思わせるパワーが必要だったと思います。同じくジャンプのエロコメ作品である「ToLOVEる」はこの点が非常に巧みで、エロい、エロくない以前にすごいバカで、すごいパワーがあったんです。

「レディ・ジャスティス」はこの点が弱くて、例えば最終話のラストも、せっかくヒロインが宇宙空間で爆破に巻き込まれて全裸になったのに「恥ずかしくて地球に帰れないよ~」で終わってしまう。最終回なんですよ! せっかく宇宙に出たんですよ!? そこは宇宙規模、地球規模の壮大なスケールでヒロインを辱めるべきじゃないんですか……!!? やっぱりパワーが足りない!

 この漫画には能力バトルにも似た知的な面白味があったし、恥ずかしいコスチュームを泣いて喜びながら着るといったマニアックなエロチシズムもありました。しかし、その面白さは効果的に表現されていなかったと思います。

 なので、総合的に言えば打ち切りもやむなしの作品だったと思いますが、作者さんが自分の面白さをもっと自覚して、そこを強調して描けていたならば、「なんとなく女の子の服が破ける漫画」といった印象では終わらなかっただろうとも思っています。次回作に期待したいです。

著者プロフィール

作家

架神恭介

広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『仁義なきキリスト教史』(筑摩書房)

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