国慶節で大挙して押し寄せる“爆買い中国人”接客マニュアル
こんにちは。中国人漫画家の孫向文です。中国では現体制の「中華人民共和国」が樹立した10月1日を「国慶節」という記念日に制定しています。日本で言えば2月11日の建国記念日にあたる日なのですが、僕にとっては、国慶節はあくまでも「中国共産党政府」が樹立した日にすぎないので、素直に祝うことはできません。
絶好の行楽シーズンに商売を成功させるには
中国国内では国慶節から一週間程度の連休が始まるので、国内に住む中国人にとっては絶好の行楽シーズンとなります。現在は景気が減速していることもあり、政府はこの時期に国内の観光産業を活発化させたいと考えていますが、多くの中国人、特に富裕層にとって行楽の目的地は外国という例が多く、そんな中でも最も人気の場所が日本なのです。日本人の立場からすると大勢の中国人たちが品物を買いあさる光景に対して複雑な感情を抱かれるかもしれませんが、僕としては、爆買いは日本が外資を得るための有効な手段として割り切ってもらえればいいのではないかと考えています。
では彼ら相手に商売を成功させるためにはどうしたらいいか。僕が見る限り、「間違った接客」をしている例も見受けられるので、今回はそれをお伝えすることにします。
最近の日本の家電量販店や大型衣料店では、中国人客に対応するために中国人スタッフを配属させたり、中国語で書かれたマニュアルを店内に貼り出したりする例が見受けられます。これは日本語のわからない中国人にとって大きな助けとなっていますが、これが全ての中国人にとっていいというわけではありません。
僕は初めて日本を訪れた際、「いらっしゃいませ」、「ありがとうございます」などと声をかけられることを期待していたのですが、僕が中国人だと判明したとたん中国語で対応された時は興ざめしたものです。中国人の中には、日本のイケメンとイチャつきたい中年女性や、カップルで訪問して彼女の前で流暢な日本語を披露したい若者など、日本をより楽しむためにわざわざ日本語を勉強する中国人も少なからずいます。その人が必死に日本語を話そうとしている様子が見受けられるようでしたら、あえて中国語のできるスタッフなどを呼んでくる必要はありません。
また、店の内装を中華風にするなど、商店側が中国人に合わせようとする例も見受けられますが、これでは中国人にとっては国内旅行に行くのと同じようなものになってしまうため、せっかくの海外旅行に来た意味がありません。しかも日本の中華風の内装は中国人から見るとベタベタであざとく、失笑してしまうようなものが多いのです。もし日本の方が中国に旅行に出かけたら、ホテルが畳敷きの和室でしかも「侍」などと書かれた掛け軸が飾ってあったら、と想像していただければわかりやすいと思います。
そして国慶節の時期になると、日本の商店に「慶祝国慶」などとお祝いのメッセージが貼られていることもあるのですが、中国人からすると「なんで中国人のみならず、多くの顧客を相手にした日本人の店だというのに、中国の建国をお祝いしているのだろうか?」と妙な感覚に陥ってしまいます。さらに僕を含め、現在の共産党政権をこころよく思わない中国人も多く、国慶節を祝うことが逆に客離れにつながるといった可能性もあります。これはちょっとやりすぎでしょう。
昨今、政治的には対立ムードの日中両国ですが、日本に訪れる中国人たちは観光と政治は別物と割り切っているケースがほとんどです。そして彼らが求めるのは電化製品や高級ブランド品だけではなく、日本の文化が感じられる場所や、新鮮な空気、清潔な都市、衛生的でおいしい食事など、中国にはない日本の魅力的なところです。
そのため、もし中国人相手に商売を成功させたいとお考えなら、中国人の便利性を考えつつも、かつての民主党政権のように中国側に媚びすぎてはいけません。昨年大ヒットした映画『アナと雪の女王』の劇中歌のように日本文化の「ありのまま」の姿を魅せることが大切だと思います。
著者プロフィール

漫画家
孫向文
中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)
(構成/亀谷哲弘)