時給の出るアイドル:瀬名あゆむ連載14

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時給の出るアイドル:瀬名あゆむ連載14

瀬名あゆむのAV vs アイドル
~もし元AV女優がローカルアイドルのプロデューサーになったら

第14回「時給の出るアイドル」

 こんにちわ。仙台&千葉のローカルアイドル『2ねん8くみ』プロデューサーの瀬名あゆむです。
 さて、仙台の事業家の方に思いっきり「アイドルカフェをやらせてください!」と言ってしまった私。だいたい元AV女優が引退後に始めるお店なんて普通はクラブかスナック、もしくはバーですよね。
 それこそ「元AV女優と飲める店」的なのが普通です。それがいきなりアイドルカフェをやりたいなんてかなり無茶です。
 「あ、アイドル……カフェ……ですか?」
 事業家の方もきょとんとされていました。
 正直、その頃のバリバリAV女優だった私のイメージからは想像がつかなかったかもしれません。

 なので、なぜ私がアイドルカフェをやりたいのかをきちんと説明しました。実は10代の頃に芸能スクールでアイドル活動をしていたこと。でも全国メジャーデビュー寸前で挫折してしまったこと。現在はアイドル運営の勉強もしていること。さらには、「最近のアイドルってCD販売や芸能仕事だけでなくて、ライブハウスからのイベントネット配信で大きく稼ぐこともできるんです。人気イベントになると1回の配信で5,000万円売上げたりするんです!」――なんて、ちょっと大きいこともアピールしました。

瀬名さん、お店は甘くないですよ

 でも何十軒ものお店を経営してきた事業家の方は冷静にこう言われました。
「瀬名さん、お店をやるというのはそう甘くはないです。特に飲食系でもショーを観せるお店というのはなかなか利益を出しにくいものなんですよ」

 そこで私は、かつて札幌の平岸ゴールデン街で、自らがオーナーとして経営したあの給食カフェ『2ねん8くみ』の経験も話しました。
 正直に、隠さず、成功も失敗もすべてを話しました。
「自分でお店のコンセプトを考えて、内装も自分で揃えて、ギャル友達を集めて、女子高の文化祭の模擬店みたいなお店にしたら、とても繁盛したんです」「ただその後、友達に任せて店を少し離れたら、あっという間につぶれてしまいました」「それが悔しくて、いつかまた絶対復活させようと思って、そのときの店舗備品は店の看板も含めて全部保管してあります」「だから、その経験もベースにして、本気でアイドルカフェをやりたいんです!」

 すると、事業家の方はこんな質問をされました。
「その札幌の一度は成功したカフェの給食はいくらで出してたの?」
 私はこう答えました。
「セットで600円です。周りからはもっと高くすればいいと言われましたけれどギリギリの価格にしました。売上げも大事ですけど、それ以上にお客さんに〝楽しい店だね〞〝居心地のいい店だね〞と思ってもらいたかったので」
「わかりました。じゃあ新しい店もその気持ちだけは絶対に忘れずにやってください」
「あ、はい! ありがとうございます!」

 こうして、仙台でのアイドルカフェ開店に向けて私は走り出しました。まずは店舗探しです。私はカッコいい店、派手な店にするつもりはありませんでした。地味で目立たなくても、アイドルファンの方々が集まりやすい店、それこそなによりも、事業家の方に念を押されたように、お客様にとって居心地のよいお店にしたかったのです。
 そのために、敢えて繁華街中心部での出店は避けました。
 地方都市で飲食店を開く場合、街で一番人通りの多い繁華街/飲み屋街にお店を出すことが成功の第1条件といわれたります。けれど繁華な飲み屋街にお店を出すと、どうしてもお酒目当てのお客様が増えて、雰囲気がちょっとアイドルからはズレてしまう恐れがあります。さらには店舗テナント料金も高くなる。ただその分、お酒の注文が増えたりで売上げがあがる良い面もあります。結局、悩んだ末にやはり飲み屋街は避けて、仙台駅近くで、さらに大型家電量販店のそばの小さなビルの2階の店舗を借りることにしました。アイドルファンの方々にとってかなり立ち寄りやすい立地条件だと思ったからです。

 お店の広さは普通の学校の教室を一回り半くらい小さくした大きさです。店内の内装はかつての『2ねん8くみ』の学校用の大きな黒板・机・椅子を再び使うことにしました。黒板が大きすぎて少し切ることになったのはちょっと悲しかったです。看板も一部描き直して店頭に置きました。
 新しい店名は『あいどるかふぇ 2ねん8くみ』、通称にっぱち!
 内装代が節約できたのもありがたかったけれど、それ以上に『2ねん8くみ』を本当に復活できた喜びのほうが大きかったなぁ。しかもアイドルカフェとして復活できるなんてね!
 大きな黒板があって、机と椅子があって、まるで本当の学校の教室みたいで、でも教室と違うのはステージがあること。そのステージで毎日アイドルたちが歌って踊り、お客様は学校の生徒のような、もしくは先生のような気分でアイドルたちを眺めたり、おしゃべりしたり、チェキを撮ったりできるのです。

5,000万円が500円に。でもそれでいいと思った

 次に考えたのはアイドルカフェの料金設定です。
 仙台駅前周辺にはすでにメイドカフェなどもあります。飲み屋街にはガールズバーもあります。私はそういう女の子がいるお店の中で、できれば一番安いお店にしようと思いました。やっぱりなんだかんだいっても、安いお店って居心地いいじゃないですか。
 それで1時間のチャージ料金を500円にしました。
 ソフトドリンクもすべて500円にしました。
 さらにはアイドルたちと撮影できるチェキの料金も、アイドル界では1,000円以上が相場のところを半分の500円にしました。
 チェキは主要商品なので安くするのは正直キツいです。でも500円にしたらみんな2枚撮ってくれるかもしれない。それでより親密度合がまして、よりファンになってくれるかもしれないなって。

 結局、いろんな料金を500円からにしました。
 アイドル運営をやってみたいと思い始めた最初の頃の六本木で「1回のライブ配信で5,000万円儲かる!」なんて興奮していたことを振り返れば、嘘みたいなスケールダウンです。
 けど、これでいいんだ、と思いました。
 できるだけ気軽にお客様に通ってもらって、チャージを戴き、ドリンクを飲んでもらって、チェキを撮ってもらって、ステージを楽しんでもらう。そうやって毎日ちゃんと売上げをあげていく。
 そしてカフェでキャストとして働くアイドルたちにきちんとお給料を支払っていく。
 そう、私は『2ねん8くみ』を「時給のでるアイドル」にするつもりでした。
 アイドル運営をやりたいと思い立ってから、アイドルとお金の問題をずっと考えていましたけれど、その自分なりの答えがこれでした。
 アイドルカフェの経営をきちんと成り立たせて、アイドルたちは店で働くことでちゃんと賃金をもらえて、そしてファンの方たちにも満足してもらえるお店にして、そんなお店をベースにして、その上でより大きなアイドルグループを目指していきたい。
 だから5,000万円よりまずは500円なんです。
 500円がとても大事だと思ったんです。
 大事な大事な500円をいかにお客様に満足して払っていただけるか。そこからしか、時給のでるアイドル、時給のだせるアイドルを生むことはできないと思ったんです。

 ゆえに『2ねん8くみ』のアイドル募集はオーディションではなく「求人」にしました。アルバイト情報誌に求人広告を出したのです。当然、時給や待遇もしっかりと明記して。
 ただし、あくまでも「アイドルの求人」としました。単なる店員さんではなく、アイドルを目指す者たちへの募集でした。

 けれど、ここでまた新たな問題が生まれます。
 私・瀬名あゆむのことです。アイドルを募集し、アイドルカフェを経営していく上で、私・瀬名あゆむの存在をどうするか、です。
 瀬名あゆむは元AV女優です。
 その知名度は『2ねん8くみ』のプラスにできるかもしれない。
 けれど逆に大きなマイナスになる可能性もある。
 どういう形で、どういう名前で、私は〝にっぱち〞と関わるのか?
 私は自分で決断をしなければなりませんでした。

(以下、次回へつづく)

 

【次週予告】
アイドルカフェの中でアイドルとAV女優の関係をどう位置付けるべきなのか? 瀬名あゆむの下した決断の中身とは……!?

★2ねん8くみ仙台店 HP http://www.2-8cafe.com/
 ( ツイッター https://twitter.com/idolcafe2_8/ )

★2ねん8くみ千葉店 HP http://2nen8kumi-chiba.com/ 
( ツイッター https://twitter.com/chiba_nippachi/ )

【瀬名あゆむ:プロフィール】
仙台&千葉のローカルアイドル『2ねん8くみ』プロデューサー。10代の頃に北海道のローカルアイドルとして活動し、メジャーデビュー寸前で挫折。その後、地方局TVレギュラー出演等をへてAV女優となり500本以上に出演した。1985年生まれ・さそり座・A型。

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