【おもしろ実験】「世界一臭いにおい」は人工的に作れる?
日々、世界のどこかで起きている「争いごと」。せめてケガ人がでない方法はないものだろうか?と思うのが人情で、アメリカやイスラエルで「悪臭」を使った武器が開発されているのはご存じだろうか?
においの好き嫌いは生まれ育った環境によって決まるので、世界中の誰もがクサい!と感じるにおいは見つからず、アメリカ・国防総省による「におい爆弾」計画はみごとに失敗…。ところが、イスラエルではスカンクのおなら、アメリカでも排せつ物や死臭を使い、ケガをさせない平和な「武器」が実用化されたのだ。
■「国境なき悪臭」の誕生
においの好き嫌いは生理的な要素よりも学習的要因が強く、生まれ育った地域や文化によって大きな差が生じる。もっともわかりやすいのは新生児で、妊娠後期〜授乳期に母親がよく食べる食品を好むようになる。ある実験では、母親が毎日300mlのにんじんジュースを飲んだところ、赤ちゃんもそれを好むようになったとのデータがある。母親が飲み始めた時期と、赤ちゃんがにんじん味を好む率は、
・妊娠後期から飲み始める … 62%
・授乳期から飲み始める … 55%
で、早い段階から摂取するほど赤ちゃんもそれを好む傾向が強くなる。似たような研究で、ワカサギとワカメを浸した水のにおいをかがせると、海辺で育ったひとは「磯の香り」と言うが、海から遠くで育ったひとは「腐ったにおい」と回答する率が高かった。多くの日本人が大好き!と答えるだろう「かつおぶし」も、ドイツ人の6割は「不快なにおい」と感じるとのデータもあり、これらの結果から、万国共通の「好きなにおい」を作るのは非常に困難なことがわかる。
悪臭も同様で、誰もがイヤだと感じるにおいを作ろうとして、失敗した例がある。アメリカ国防総省が2000年代前半におこなった「におい爆弾開発プロジェクト」で、多くのひとは腐敗臭をイヤがることはわかったが、結論が出せないまま終わってしまった。
腐敗とは異なるが発酵食品がよい例で、納豆好きな日本人でも、世界一クサい缶詰・シュールストレミングを好むとは限らない。においの好き嫌いは「食べたらおいしかった」と過去形で生まれるためで、幼いころから食べていれば「おいしい」が優先され、イヤなにおいではなくなってしまうのだ。
ところが、2009年に、アメリカのパメラ・ダルトン博士が世界一クサいにおい作りに成功した。ベースとなるのは死体の腐敗臭とひとの排せつ物で、どちらも「国境なき悪臭」に着目したのがすばらしい。博士はこの結論に至るまでに、ネコのウンチを焼く、イヌのおしりから出るにおい物質、男性の下着や靴下も試したというから、気合いの入れ方がハンパではない。これも国防総省の依頼というから、ペンタゴンにはクサいもの好きが多くいるようだ。
■暴徒を鎮圧する「スカンク」
イスラエルでもデモ鎮圧などに悪臭スプレーが使われている。こちらはマンガでおなじみのスカンクの「おなら」成分をベースに、強烈な糞尿臭で戦意を喪失させるのだ。
元祖・スカンクは「おなら」と表現されがちだが、肛門嚢(のう)と呼ばれる器官から飛び出す分泌液が正体。気体のおならは短時間で解消できるだろうが、悪臭を放つ液体が付着すれば長期に渡って天敵を苦しめるのは確実だ。
悪臭スプレーは2008年のデモ鎮圧で実際に使われ、効果は立証済。元祖・スカンクのように強力な「液体バージョン」が登場しないことを祈ろう。
■まとめ
・アメリカ国防総省で「悪臭兵器」が開発された
・万国共通のイヤなにおいである死体と排せつ物がベース
・イスラエルではスカンクのおならをスプレー化し、暴徒鎮圧に使われた