スマホは第二の鏡?新しいテクノロジーで変わる私たちの日常生活
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レビュー
遺伝子検査、ウェアラブル端末、ライフログ(行動履歴データ)、IoT(Internet of Things)、AI(人工知能)などなど、これまでになかった新しいテクノロジーが日常生活に浸透しつつあります。
ただし、いまいちピンときていない人も多いのではないか?
そう指摘するのは、『自分のデータは自分で使う マイビッグデータの衝撃』(酒井崇匡著、星海社)の著者。
つまり、それらによって「できること」はなんとなくわかっていても、それが「自分の日常生活にどんな影響をもたらすのか」、そして「私たちの意識や価値観がどのように変わりうるのか」を、具体的に思い浮かべることは容易ではないということです。
■いまは自分情報が爆発するマイビッグデータの時代
しかも、重要なことがあるといいます。
いま遺伝子情報、ウェアラブル端末によって計測される脈拍などのバイタルデータ、スマートフォンに蓄積されるライフログ、そして、それらを解析する新しいテクノロジーが暴こうとしているのは、私たち自身に関する大量の情報だということ。
それは住所・氏名・年齢などの個人を識別するための「個人情報」よりもずっと多様で、可変的で、自分の姿をあからさまに映し出す情報。つまり私たちは、そういった大量の「自分情報」が爆発する「マイビッグデータ」の時代を迎えようとしているわけです。
■これからは自分と自分による自己対話が日常になる
マイビッグデータ時代には、いままで知らなかった自分と向き合い、対話していくことが日常になっていくと著者は指摘しています。
人と人との間(C to C)、あるいは国、企業など集団と人との間(B to C)で行われてきたコミュニケーションに、自分と自分による自己対話(Me to Me)という新たな側面が加わるということ。
だとすれば大切なのは「テクノロジーでどんなことができるようになるか」ではなく、「そもそも私たちはどう生きていきたいのか」ということになるはず。
いわば「できること(=技術)」発想ではなく、「やりたいこと(=生活者の欲求・価値観)」発想で未来を予測できないだろうかということです。それは、本書の根底にある考え方でもあるといいます。
■新テクノロジーは「自分の内面を見つめるための鏡」
ところで著者は、マイビッグデータを計測し、可視化してくれるテクノロジーは私たちにとっての“第二の鏡”であると指摘しています。
ウェアラブル端末や遺伝子検査、スマホのアプリなど、マイビッグデータを可視化するさまざまなツールを日常的に使っていると、鏡を見るように自分の睡眠の質や脈拍などをチェックするようになるのは当然の話。
鏡は自分の外見を確認し、身だしなみを整えるためのものですが、このような新しいテクノロジーは、自分の内面を見つめるための鏡であるという考え方です。
しかもその鏡は、“いま”の姿を映し出すだけではなく、使われていないときでも私たちの姿をずっと記録し続け、その変化を教えてくれる“魔法の鏡”だというわけです。
ちなみに、そのような新テクノロジーの代表的なものは次の4つ。
(1)ウェアラブル端末
体のどこかに装着することで、体の動きや脈拍など生命活動の状態、いわゆるバイタルデータを計測してくれるウェアラブル端末。腕時計型が一般的ですが、他にもメガネ型や服型などさまざまな形状が開発されています。
バイタルデータを計測することのポイントのひとつは、計測して記録したひとつひとつのデータを複合的に組み合わせれば、活動や体調、感情といったさまざまな推計をすることができるということ。
さらにウェアラブル端末を職場の全員が持てば、誰がいつ、どこで誰と会い、どんな行動をしていたのかを解析し、組織の活性化やパフォーマンス、従業員満足度の向上に活用することもできます(活用のされ方次第では問題もありそうですが)。
今後どの程度浸透していくのかはまだ未知数ながら、スマートフォンのように浸透していくポテンシャルは高いと著者は分析しています。
(2)スマートフォン
計測機器としてのスマートフォンの圧倒的な強みは、なんといってもその普及率。それに現状においては、ほとんどのウェアラブル端末はスマートフォンと連携してデータの蓄積や解析を行っているため、マイビッグデータ時代はスマートフォン抜きには語れないということになります。
(3)遺伝子検査
遺伝子検査では病気リスク以外にも、能力や体質、家系などさまざまな情報を調べることが可能。研究も日進月歩で進んでいるため、今後も分析できる項目は増えていくといいます。
ただし「その遺伝子がどの程度、影響するのか」をきちんと理解していないと、検査結果を過大評価してしまうことにもなりかねないので注意が必要。
(4)IoT
IoT(Internet of Things、モノのインターネット)は、パソコンやスマホなどのIT技術だけではなく、家や家電、車、インフラ、工場など、私たちを取り巻くあらゆるモノをインターネットで接続することにより、暮らしや産業をより豊かに、効率的にしていこうとする技術。
究極的には人間や動植物の活動すべてをデータ化していくことになる可能性があるので、IoL(Internet of Live)でもあるといっていいほど広がりを持っているそうです。
たとえばドアとライト、冷蔵庫がネットに接続され、データを計測するだけでも、自分がいつ帰宅して電気をつけたか、何時に電気を消して眠りについたか、などが明らかになるということ。
私たちの行動がより詳細に、多面的にデータ化されていくわけです。
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こうして上辺をさらってみただけでも、私たちが生きる時代のスピード感を実感できるのではないでしょうか?
そして、そんな時代だからこそ、自分のデータに翻弄されるのではなく、それを使いこなすことが大切だということです。
ビッグデータ時代について深く考察すべきタイミングは、すでに訪れているといえるでしょう。そういう意味でも、本書には読むべき価値があると思います。
(文/書評家・印南敦史)
【参考】
※酒井崇匡(2015)『自分のデータは自分で使う マイビッグデータの衝撃』星海社