個体数が減ったオオカミが子孫を残す相手として選んだのはコヨーテだった。オオカミとコヨーテのハイブリッド種「コイウルフ」
出会いの少なさは若者にとって深刻な悩みかもしれないが、それは人間に限ったことではない。森林の伐採と狩猟によって、着実に数を減らしつつある北アメリカ東部のハイイロオオカミたちは、子孫を残す相手としてコヨーテを選ばざるをえなかった。
種を超えた恋は素晴らしいものだが、オオカミにとってコヨーテは格下とも言える相手だ。偶発的なロマンスの結果、できた子孫は体重25kgの中型肉食獣である。その遺伝子構成は、犬8%、オオカミ8%、コヨーテ84%で、コイウルフ、あるいはイースタン・コヨーテと呼ばれている。
Meet The Coywolf | Nature, Trailer | PBS
アメリカの都市部に頻繁に出没するコイウルフ
コイウルフは、昨年、ニューヨーク市だけでも、チェルシー、ロング・アイランド・シティ、クイーンズ、アッパー・ウェストサイド、ブロンクスの各地区で目撃されている。夜行性で、特に問題も起こさず、ひっそりと生活しており、それゆえに巧く適応できている。
実際、かなり一般的な存在となっており、ニューヨーク市公園レクリエーション課が、「ニューヨーク市のコヨーテとの共生」という案内まで作成したほどだ。

カナダで誕生し、急速な進化で生態域を広げるコイウルフ
その起源は1世紀前のカナダ、オンタリオ州だという。それ以来、東部に暮らすオオカミのテリトリーを制圧したほか、ノバスコシア州からニューファンドランド島の氷盤にまで移住し、ヘラジカやトナカイのような特徴まで発達させた。一方で、東海岸側の都市部や鹿などの大型の獲物が存在する地域にも進出した。
彼らは非常に適応性が高く、かつてオオカミが君臨していた食物連鎖の頂点に立つまでになった。コヨーテよりも大型かつ俊敏で、大きなアゴを持っている。また、その鳴き声はオオカミの遠吠えとコヨーテの甲高い鳴き声を足して2で割ったようだ。狩りを行う以外にも、果物や野菜などの残飯でも食べることができ、これが環境への適応性をさらに高めている。これほどまでに広い地域で繁栄できた例は滅多にない。

コイウルフの進化は、興味深い近道を通っている。専門家によれば、異種交配は急激な進化を果たすための方法の1つであるようだ。気候や生息環境は従来にない速さで変化しているために、これに適応して生き延びるには混血が鍵なのかもしれない。そして、異種交配は新しい現象などではないが、固有種が数を減らしている現在、ますます一般になっていることはほぼ間違いがない。
ハイブリッド種の問題点
だが、一部の地域ではこれが起きな問題にもなっている。混血によって動物本来の姿が失われるからだ。例えば、ペットの猫と混血した結果、スコティッシュ・ワイルドキャットは非常に珍しい存在になってしまった。また、アジアの水牛も家畜との混血によって同じ道筋を辿っている。

さらに大いに紛糾している科学的な疑問も突きつけてくる。どの種に分類すべきなのかという問題だ。
種については20以上もの概念が存在し、人それぞれの定義に依存する。ある専門家は、東部のコヨーテを「コイウルフ」と名付け、新種として認定するのは抵抗があるという。新種であるためには、ウェスタン・コヨーテと大きく異なり、重要な遺伝子流動を共有していてはいけない。そして、現在のところ、その両方とも当てはまらない。新種に向けて進化している可能性はあるが、今はまだだ。
今後コイウルフはどうなる?
それでは、近い将来コイウルフはどのような姿をしているのだろうか? より身近な言い方をすれば、都市生活者にとってどのような存在となっているのだろうか? 彼らは夜の通りを徘徊する野生動物の心配をしなければいけないのだろうか?

これは確かに大きな懸念事項だ。西部地域の一部では、コヨーテが大胆になってきているという。しかし、東海岸でそうしたことはまだ起きていない。コヨーテには危険な生物を避けようとする強い本能があるからだ。
もし、コイウルフが人間を危険な生物であると認識していれば、人を避け、争うことは減るはずだという。しかし、そうでない場合は、徐々に近寄り、ペットの猫や犬など、場合によっては人間の子供をも襲うようになる可能性はある。従って、人間に対する健全な恐怖心を育ませることが大切であるという。

コイウルフの問題を減らす方法はもう1つある。オオカミに彼らを追い払わせることだ。だが、これは無理な話だろう。人間はオオカミの数を随分と減らしてしまっており、残ったオオカミもすでにコヨーテと共生し始めているからだ。
コイウルフは今後も都市で暮らし続けるだろう。問題は人間の側が適応する方法を学べるかどうかということであるようだ。
via:atlasobscura・translated hiroching / edited by parumo