高円寺のレインメーカー:鈴木詩子連載88
ため息が全部お金になったらいいのに…
鈴木詩子の「私が出会ったウンザリ女」
第88回「高円寺のレインメーカー」先日、主婦のJちゃんとお茶していた時の事です。
「詩子…そういえばこの間ね、同じマンションに住んでるママ友がカフェのイケメン店員にナンパされたんだって」
「え! その店員、人妻だって知ってて言ってきたの?」
「その場で、ちゃんと言ったらしいけどあまりにも感じが良かったからLINE交換して、毎日やり取りして楽しくてたまらないんだって…いいよね~」
「ふふっ…」
「何、ニヤニヤして…えっ! 詩子もナンパされたの?」
「違う、違う! ナンパじゃないんだけど…この間、高円寺で飲んだ時にオーダーを取りに来た店員さんがね、なんか金髪に近いような茶髪で眉毛も染めててチャラついた雰囲気で嫌だな~怖いな~と思っていたのね、そしたら…」
「そしたら?」
「その店員さんに『そのTシャツ、田口選手のですよね?』って話しかけられたの」
「ん?」
「その時、私…新日本プロレスの田口選手のオヤァイ! Tシャツを…要するにプロレスTを着ていたのね」
「あぁ、プロレス好きな人だったんだ?」
「そう! で『誰が好きなんですか?』って聞いてみたら『オカダ選手です!』って言ってボロボロにくたびれた手帳を見せてくれたんだけど…そこにね『レインメーカーの。』って書いてあったの!」
「何、レインメーカーって?」
「オカダ選手のキャッチフレーズみたいなものなんだけど、金の雨をしっかり作って潤わせてやる、みたいな意味で…まぁオカダ選手自体も、レインメーカーって呼ばれていたりもするのね」
「はぁ…」
「で『ここの(飲み屋)みんなには、レインメーカーって呼んでもらっているんですよ』って照れた感じで言ってるのが可愛くってさ…あぁ、オカダ選手が大好きなんだなぁって思って」
「か、可愛い? チャラついてて怖いって言ってたくせに…」
「そうなんだよ~! その手帳のボロボロな感じも、一生懸命メモしながら仕事を覚えたのかな? って想像させるし、なにより『レインメーカーの。』の、最後の『。』から真面目さが伝わってきて一気に警戒心が解けちゃったんだよね」
「で、LINE交換したの?」
「しないよ~! でもね、お会計の時に『レインメーカー!』って呼んだら『はーい!』って来てくれてお金を渡したら『お釣りの雨が降るぞ~』って40円とクーポン券をくれてね『次回、このクーポンでレベェェェルの違うサービスをします!』ってレインメーカーポーズをしてくれたんだよ! 凄くない? あ、レインメーカーポーズは、オカダ選手の決めポーズね」
「で?」
「また絶対行こうと思って!」
「詩子って簡単だね…危ないよ、案外ホストとかにハマっちゃうタイプなのかもね」
「何でよ? ただ、プロレスファン同士楽しくお話ししただけじゃん」
「え~! それって、また来店してもらえるようにサービスしてくれただけだよ…そんな事も分からないの? もう、キャバクラに初めて行って恋しちゃったおじさんみたいな事言わないで!」
「うっ…」
サービスだっていい! やっぱり…また高円寺のレインメーカーのお店に行きたい、と思ってしまう私なのでした…ウンザリ☆
すずきしいこ…漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなアイドルは嗣永桃子。著書に『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)
チヤホヤされたい女子高生・桃子は、いつだって残念な感じだった。でも、そんなのもうイヤ! 立ち上がった桃子の熱い想いは、クラスのみんなに届くのか!?
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