中国人が語る安部政権「一億総活躍社会」に提言…心を病んだ人にチャンスを
こんにちは。中国人漫画家の孫向文です。2015年10月、安倍晋三首相は内閣を改造した際、「一億総活躍社会」というスローガンを掲げ、女性の職場進出や子育て支援を積極的に支援する策略を打ち出したことは、皆さんもご存じでしょう。
11月26日には、具体策を検討するための「一億総活躍国民会議」が開かれ、「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」などの達成に向けた緊急対策を決定しました。これらは、少子高齢化に対応した政策ということですが、僕はこれを達成するのは非常に困難だと思います。
日本の労働力を向上させるために必要なこと
もし今後、女性の社会進出が進めば、多くの女性が仕事に追われるため、結果的に未婚者が倍増することになり、少子化がさらに進行するという本末転倒な結果になるかもしれません。
子育て支援も、現代は経済的な理由から子供を作らない世帯も多く、仮に出生率が向上したとしても、生まれた子供たちが労働力になるのは十数年後であるため、景気回復に対する早急な対策にはなりえないでしょう。一部からは、外国人労働者を積極的に受け入れようという声があるそうですが、ドイツの例を見ればわかるように、大量の外国人受け入れを実行すると、国内が混乱状態になる可能性が高いのです。
では、どのようにして日本の労働力を向上させるのか、僕の案としては、うつ病、不安障害、アルコール依存症など、「精神を病んでいる」と判断され職を失った人々を社会復帰させるというものです。
治安の良い都市、高性能なインフラ設備、利便性の高いサービスなど、日本には他国にない優れた点が数多くあります。僕自身も日本に住んでいて「暮らしやすい国だな」と常日頃から感じています。
そのように世界トップクラスの環境下で暮らしているはずの日本人ですが、そのわりには心を病み、社会から疎外されている人が多い印象を受けます。精神的な疾患を訴える日本人の数は年々増加しており、2011年度には約320万人に達したそうです。(厚生労働省調査)。
一方、中国の現状を見てみると、平均年収は日本の1/8程度であるにも関わらず、都市部の平均不動産価格は日本の2倍程度に達しています。そのため恋人同士が結婚したくても、新居が購入できず泣く泣くあきらめるという事例が頻発しています。
そのほかにも広がる一方の格差、環境汚染、危険性の高い食品の氾濫など、現在の中国は様々な問題を抱えており、国内のWebサイト「生命時報」は、「中国が世界一のストレス社会だ」と自虐的に紹介したほどです。しかし、2010年度に精神疾患と判断された人は1600万人程度でした。環境的には天と地のはずの日本と中国ですが、それにも関わらず、中国の精神疾患者の人口比に対する割合は日本の半分程度なのです。
日本人は、あらゆる面でルールを遵守し丁寧に仕上げようとする傾向があります。その完璧主義ともいえる国民性は日本人の長所ですが、同時に短所になっている気がします。日本人は何事にも完璧を求めるがゆえ、多少の失敗をひどく後悔したり、人より能力が劣ることを激しく嫌うため、精神的にダメージを受けやすいのかもしれませんね。
また「出る杭は打たれる」とばかりに均一化を好む傾向があるため、少しでも人とは違った面を持つ人はなかなか社会に受け入れられず、疎外された人物はますます精神を病んでしまうようにも思えます。
このように繊細な感情を持つ日本人とは対極的に、何かと大雑把なのが中国人。「細かいことは気にしない」という精神が、世界中に中国人が進出する原動力になっていると同時に、公害問題や汚職をはじめ、様々な問題を引き起こしています。
これもこれで問題ではありますが、日本はここまで裕福で完成された社会なのですから、逆に日本人も中国人のようなお気楽さを持ってもいいような気がします。そうしたら、心を病む人は激減するのではないでしょうか。
日本の社会は心の病に対する偏見が根強く、精神疾患と判断された人々が職場を解雇され、引きこもり状態になったり、ひどい例だと自殺してしまうことがあると聞きました。
ですが、絵画、音楽、小説など、精神になんらかの疾患を抱えているクリエイターは世界中に存在し、高い評価を得ている人も少なくありません。日本にも統合失調症を患った女性画家が存在すると聞いたことがあります。
現在、日本に数百万人存在するとされる精神疾患者の多数が社会に復帰すれば労働力が大幅にアップするでしょう。彼らの作品が世界で評価され、日本に大きな経済的効果をもたらすかもしれません。今後、日本政府が精神疾患者に対する偏見を振り払い、彼らが社会で活躍できる状態になった時こそが、本当の意味で「一億総活躍社会」の到来といえるのではないでしょうか。
著者プロフィール

漫画家
孫向文
中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)
(構成/亀谷哲弘)