【陸自情報漏えい】「真の国益のため」幹部自衛官が秘密を漏らす本当の理由 (2/2ページ)

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退官後の待遇に不満を持つ場合もある

 だが、こうした話はすべて綺麗ごとに過ぎないという幹部自衛官も少なくない。海将補で定年した自衛隊OBのひとりはいう。

「自衛隊の待遇がよくないからですよ。幹部自衛官で定年しても再就職先も他省庁に比べてあまり恵まれていない。防衛大学校に入ってくる者は、進学校でも優秀だった人が多いですが、高校時代の同級生と比べると、幹部自衛官という商売は苦労の割に収入面でも恵まれない。安いカネでこき使われて、再就職もパッとしない。そんな不満も背景にはあると思う」

 この元海将補によると、技術畑のある定年自衛官が日本企業に再就職したが、中国系企業からのオファーが引きも切らなかったという。

「今の収入の3倍、自宅も用意しましょうと──勤務先は日本国内でいい。時折、出張という名目で中国に来てもらえれば問題ない。そこまで言われるとぐらっと来ても不思議ではありません」(元海将補)

 こうした“魔のヘッドハンティング”ではなく、自衛隊定年退職時、自衛隊からの紹介で就職した企業が入ってみると中国系ファンドの出資企業だったという例もある。

「収入も、他の再就職を考えた企業さんよりもよかったので入社しましたが、どうも中国出資の企業だと、入社後、社の同僚の方から聞きました。別に自衛隊の話を聞き取られたりはしていませんが。不安です。でも収入がよく休暇も多いので。文句は言えません」(元海上自衛隊で航空職域だった下士官)

 各国の情報網は、いまや民間企業にまで及びわが国の情報を吸い上げている実情がある。今回の陸自スパイ事件によるわが国安全保障上の影響は、「ほとんどない」(冒頭部で紹介した1等陸佐)という。だがはたしてそういい切れるのか。

 知らない間に中国出資企業に再就職、そこの居心地がいいと語る元自衛官を見ると、どこか空恐ろしくなる。今回の事件を契機に今一度安全保障における情報保全のあり方を見直すべきだ。

秋山謙一郎(あきやまけんいちろう)
1971年兵庫県生まれ。創価大学大学院修士課程修了。主著に「ブラック企業経営者の本音」(扶桑社)、共著に「知られざる自衛隊と軍事ビジネス」「自衛隊の真実」(共に宝島社)など
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