【山口組分裂騒動】「事始め」で示された指針…名古屋と神戸の思惑(前編) (2/2ページ)
もともとポスト的にも経歴の面でも、橋本統括委員長の方が竹内照明若頭補佐よりも上位にある。ところが、弘道会は、司忍6代目が起こした組織で、2代目を務めたのが髙山若頭。その“庇護”を受け、高圧的な物言いをする竹内若頭補佐と、その振る舞いを許す司6代目が、橋本統括委員長は不満だった。
その爆発が、抗議的失踪となったが、当然、許されるものではない。本来なら、「解任のうえ除籍」が筋だろうが、神戸山口組との「人の奪い合い」のなかで、内輪もめの表面化は良くないということで、司6代目は、3日後、他の執行部メンバーの説得に応じて詫びを入れた橋本統括委員長を許した。
とはいえ求心力の低下は避けられない。司6代目は、事始めに執行部人事を断行、橋本統括委員長とその次のポストの大原宏延本部長(大原組組長)を連帯責任のような形で外し、統括委員長に藤井英治若頭補佐(5代目國粋会会長)を就け、本部長に竹内若頭補佐を座らせる意向だと目されていた。
橋本、大原両組長の本拠地は大阪で、弘道会は名古屋で國粋会は東京。関西、中国、九州といった「西」の組織への神戸山口組の切り崩しが功を奏しているだけに、「西の神戸山口組」に「名古屋以東の6代目山口組」という構図が鮮明になるかと思われた。
だが、その人事は回避された。
「準備不足だし、少し時間をおいたほうがスムーズに進む」(2次団体幹部)
という計算のようだ。(後編に続く)
- 伊藤博敏
- ジャーナリスト。1955年福岡県生まれ。東洋大学文学部哲学科卒業。編集プロダクション勤務を経て、1984年よりフリーに。経済事件などの圧倒的な取材力では定評がある。近著に『山口組 分裂抗争の全内幕』(宝島社)。『黒幕』(小学館)、『「欲望資本主義」に憑かれた男たち 「モラルなき利益至上主義」に蝕まれる日本』(講談社)、『許永中「追跡15年」全データ』(小学館)、『鳩山一族 誰も書かなかったその内幕』(彩図社)など著書多数