外国人が多摩川を不法占拠?無法地帯と化す“闇畑”に潜入してみた
休日に多摩川の河川敷に出かけると、とてもほのぼのとした光景が広がっている。ゴルフ場の打ちっぱなしや、野球、ランニングなど、スポーツをプレイする人たち。語らいながら、散歩をするカップルたち。
河川敷から一歩奥へ進むと別世界が…
しかしそんな河川敷から一歩、葦(アシ)の奥に入ると、全く別の世界が広がっている。河川敷には奥に進むための、道ができている。獣道のような踏みしめられただけの道もあれば、板などを敷いて水を避けている道もある。
進んでいくと、ホームレスの家が建っている。もちろんお手製の家だが、かなり大きい家もあるし、発電機を設置して、テレビやレンジなどの家電が使える場所もあった。そして多くの家の前には畑があった。
外で椅子に座ってくつろいでいるホームレスの男性に話を伺った。
「俺は工場で仕事してるよ。週2回なのでそれだけじゃ厳しいけど、ここで暮らしていればなんとかしのげるね。畑で栽培してるのはもちろん野菜ばかりだね。大根などの根菜と、ゴーヤとかツタをはる野菜を別の畑で育てているよ」
とのこと。ホームレスが自活のために野菜を育てているのは、理解できる。ただ、ホームレスではなくて、野菜を育てている人も多いという。
畑を耕している、男性に話を伺った。
「俺はマンションに住んでるよ。趣味で畑耕してるんだ。家で小さいプランターを作ってたって面白くないだろ? 国土交通省は月に1~2回やってきて、立ち退くようにってビラを貼っていくけどそれ以上のことはしないね。結構な量収穫できるよ。ただ、野菜泥棒に持っていかれることも多いんだよね。囲いも作ってるんだけど、壊されちゃう。悔しいよね」
と語った。不法耕作地に野菜泥棒……この世の末といった感じである。ただ話を聞いていると、趣味のレベルを超えた耕作地もあるという。
「中国人はビックリするくらい大きい畑を作っているね。小屋もものすごく大きい。完全に商売で、畑をしてるんじゃないかな?」
噂では、中華料理店で使う中国野菜を育てている、などと言われていたが、実態はわからない。
河川敷には、不法滞在をしている外国人や、逃亡している外国人が居つくことも多い。日本人ホームレスとは違い、若い人も多く、また犯罪を厭わない人も多いので、周辺の治安に悪影響があるのではないか? との意見もある。
だが、河川敷の不法使用はこれでは終わらなかった。なんと、ゴルフ場を作っている人がいた。かなり広い範囲を刈り込み、地面をならしてゴルフ場にしていた。
国土交通省が出した「ゴルフはやめましょう!」の看板は、打ち壊され地面に落ちていた。僕が訪れた時は、ゴルフ場を作った人はいなかった。しかたなく、近くを歩いていた人に話しかける。
「ゴルフ場作った人? やばいよ。めちゃくちゃ怖い人だからね。話しかけただけで怒鳴られるよ。もし『ゴルフ場をやめろ』なんて言ったら、殴られるからね。気をつけなよ」
殴られるのは勘弁してほしい。結局、ゴルフ場の持ち主(製作者?)とは出会えなかったが、今でもプレイはされているようだ。
さすがにゴルフ場、以上の河川敷無断使用はないだろう、と思い歩いていると、立ち入り禁止のポールが立っている場所を発見した。そもそも本来道ですらないのに立ち入り禁止っておかしいよな? と思いながら、奥に進んでいくと、超巨大な檻が出てきた。
あまりに不気味で、思わず背中に汗が流れた。近づくと、「ネコ大人」とプレートが貼ってあった。犬用のリードや、エサのプレートも大量に保管してある。オリの中には確かに、犬、猫がいた。敷地の奥には、広場があり、レンガが点在している。……なんだろうと思って、見てみると、名前が書いてある。枯れた花や、色あせた写真もある。
「……うわ、犬猫のお墓だ」
と気づいて、胃の奥がきゅっと痛くなった。そこには誰もいなかったので、近くに住むホームレスに話を聞くと、
「ああ、このあたりのホームレスボスがペットを買うためにたてたオリだよ。ボスはホームレスじゃないよ。金融屋の社長で、ビルを何軒も持っているって噂だよ。その社長に頼まれて、俺ら(ホームレスたち)でオリを建てたんだ。犬猫が逃げた時、ホームレスみんなで捕まえるんだぜ」
と話していた。あまりに変な話なので、絶句してしまった。オリを見ていなかったら、ホームレスのホラ話かと思ってしまったかもしれない。
後ほど追加取材した時、このオリは半分潰されていた。どうしてそうなったのかは分からないが、ここにいた猫は近所のホームレスが受け取ったと聞いた。
ほのぼのとした風景の多摩川河川敷。葦の向こう側には、不法占拠、不法工作、不法滞在、……と様々な問題が渦巻いているのだ。行政は今後どう対応していくのか。注視していきたい。
- 村田らむ(むらたらむ)
- ライター・イラストレーター・漫画家。ホームレス、新興宗教、犯罪などをテーマにした体験、潜入取材を得意とする。近著に『禁断の現場に行ってきた!!』(鹿砦社)