「Bean to Bar」を味わい、知る。ファクトリーストア「DANEDLION CHOCOLATE」が日本進出
SFミッションエリアにあるDANDELION CHOCOLATEのファクトリーストア(写真提供:Dandelion Chocolate Japan)
このところ、スペシャリティコーヒーやクラフトビールなど、こだわりの食品が注目を集める米国、西海岸。そこから、また新たな食のクラフトムーブメントが起っている。
それは『Bean to Bar』と呼ばれる、新しいチョコレートのジャンルだ。
一般的にチョコレートは、生産地で大量購入されたカカオをブレンドし、乳製品や砂糖などを加えて作られることが多いが、『Bean to Bar』は、小規模生産のカカオとさとうきびシュガーだけを使い、乳製品や添加物を一切加えず、シンプルな製法でチョコレートバーに加工する。
ブレンドせず、1種類の産地のカカオビーンズだけを使う(シングルオリジン)ため、豆の味がストレートにチョコレートに反映される。つまり、 “豆が命”のチョコレートなのだ。
この『Bean to Bar』のチョコレートファクトリー&カフェとして、サンフランシスコのミッション地区にある人気店『DANDELION CHOCOLATE』(ダンデライオンチョコレート)が2016年2月、日本にやってくる。
■ クラフトチョコのムーブメント「Bean to Bar」を体験しよう


ベネズエラ、マダガスカル、ドミニカなどの産地別バー。ワインのように収穫年も記載される(写真提供:Dandelion Chocolate Japan)
『DANDELION CHOCOLATE』海外初進出の1号店は、東京の下町、蔵前だ。
店舗は、サンフランシスコの本店と同様、ファクトリースタイルのカフェになる予定だという。1階は、チョコレートの製造過程が目の前で見られるカウンタースタンドとファクトリー、2階はカフェとワークショップなどが行われるフリースペースで、総坪数60坪というゆったりしたお店になる。
サンフランシスコのミッション地区にあるお店は、元々自動車修理工場だった場所をリノベーションして作った、温かみのあるインテリアだ。
入口からは想像ができないが、中にはカフェスペースだけでなく、実際にチョコレートを作っているファクトリースペースがある。
カウンターの脇をカカオ豆の袋をカートに載せたスタッフが走り、カウンター内では、カカオ豆の選別、焙煎、粉砕、テンパリング、練り、型作り、といった一連の生産作業が見られる。
筆者が訪れた際は、地域の小学生たちがチョコレートの製造過程を見る『ファクトリーツアー』に参加していた。
チョコレートを味わうだけでなく、その製造過程を知り、豆の種類や産地のことも学べる新しい試みだ。
東京の店舗でも『ファクトリーツアー』や、『Bean to Bar』を学ぶレクチャーや体験など、充実したワークショップメニューが組まれる予定だ。

スパイスとカカオの幸福な出会いを味わえる『Mission Mocha』
カフェではホットチョコレートやモカ、デザートなど、チョコを使ったドリンク類やデザートも豊富に提供される。
今回、筆者は全く偶然にミッション地区のファクトリーストアを訪れ、『ミッション・モカ』を飲んだが、そのおいしさの衝撃が今も忘れられない。
カカオの味と香りがここまで鮮明に味わえて、スパイシーなモカは味わったことがなかった。チョコレートバーも同様。今までのチョコレートの概念を変える味の経験だったのである。
原材料へのこだわりとプロセスを見せる『DANDELION CHOCOLATE』の展開は、手仕事で丁寧に作るクラフトフードの波が確実にチョコレートにも来ていることを実感させる。
■ ガレージからイノベーションを作り出す

創業者のトッド・マソニス(右)とキャメロン・リング(左)(写真提供:Dandelion Chocolate Japan)
今回、海外初進出にあたり、米国サンフランシスコに長年在住し、日本と米国の文化の橋渡しをし、日本代表を務める堀淵清治氏にお話を聞いた。
『DANDELION CHOCOLATE』は、元々IT起業家だった2人の男性、トッド・マソニスとキャメロン・リングによって2010年に創業された。シリコンバレーでしのぎを削るIT企業経営者だった彼らが、事業を軌道に乗せ、売却した後に、自宅のガレージで始めたのがチョコレート作りだった。
彼らは、生産地に直接行き、自分の目で生育環境や品質を確かめてカカオ豆を購入することから始めた。
そして『Bean to Bar』の情報を集め、研究し、機械をカスタマイズし、その結果を綿密に記録に残し、プログラミングしていく。そしてその結果もWEBなどで公開している。
「チョコレート職人が20年かけてやるところを、2年でやるという彼らの科学者的アプローチ、そしてその結果をオープンリソースにすること、それこそがイノベーションだ」と堀淵氏は言う。
手仕事でありながら、職人の勘に頼るのではなく、IT的な要素を加え、製造に関する情報を定量化していったのである。
そして、それこそが『Bean to Bar』のチョコレートのマーケットをアジアにまで広げていく原動力になっている。
■ カカオ農家の環境を守り、育てていく

食器もデザートも日本独自のものを開発したいと話す堀淵清治氏
米国や欧州で『Bean to Bar』の波が来ていることもあり、良いカカオ豆の確保が今後一番の課題になってきている。
そのためにも、トッドらは、良質のカカオを生産する農家への購入保証や生産指導といった、カカオ農家を育てるための施策にも力を入れて行くという。
「米国のクラフトマーケットではフェアトレードやオーガニックといった要素が当たり前になってきている」と堀淵氏が語るように、より成熟したフードの世界では、産地の環境やプロセスにも責任を持つことが重要になってきている。
児童就労などの問題が取り上げられることが多かったカカオ生産だが、トッドたちのように生産者と直接向き合うメーカーが増えることが、カカオ農家の生活や環境を変えていくきっかけになるのでは、と期待したい。
来年2月の東京蔵前店オープン後は、京都、奈良、金沢、博多といった日本の感性と出会える場所にも拡大し、デザートやドリンクは日本オリジナルなものも登場しそうだ。
トッドらがガレージで始めた『Bean to Bar』のマーケットは、彼らのイノベーションにより、大きく広がり始めている。
*『DANDELION CHOCOLATEファクトリー&ストア蔵前』 東京都台東区蔵前4-14-6
2月上旬オープン予定