言葉がほしい時は無駄な数千の言葉ではなく「心に響く一言」を!
きょうで2015年も終わり。みなさんにとって、今年はどんな一年だったでしょうか?
「いい年だった」と感じる人も、そうでない人もいらっしゃるでしょうが、いずれにしても、心を清らかにして新しい年に望みたいところではあります。
そこできょうは、心をすーっと軽くしてくれるような一冊をおすすめしたいと思います。
その名も、『猫ブッダは悩まニャイ – しあわせに生きる84の方法』(宮下真著、ワニブックス)。
「はじめに」には「あるとき、飼い主さんの机の上に古い本を見つけた。『ダンマパダ』だ。ブッダの本? 仏教によくある古めかしくて説教臭い言葉を連想した。でも読むと、そのことばはじつにシンプルで、猫にでもわかった。文章はみんな短くて、ツイッターのつぶやきのようでもある」といった記述があります。
これはつまり、仏教の原始経典である『ダンマパダ』を、猫が解説していく、ユニークな書籍なのです。
と聞くと、「ふざけた本なのかな?」と思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
それどころか、あえて『ダンマパダ』を“猫目線”でとらえ、そして「ニャ」のついた“猫語”で解説することにより、とかく難しくとらえられがちな仏教の原始経典を身近なものにしているのです。
きょうはそのなかから「数字」と「言葉」に関する印象的な考えを引き出してみたいと思います。
■心に響く一言を話そう
「無益な語を集めた一千ものことばより、聞いて心の静まる有益な一言のほうがよい。
無益な語句からなる一千もの詩より、聞いて心の静まる一編の詩のほうがよい」
(ダンマパダ100-101 by.ブッダ)
これは、「ムダな数千のことばより、心に響く一言を話そうよ」という意味だそうです。
近ごろの書店では、著名人や歴史上の人物の名言集のようなものが人気だといいます。
これだけ情報があふれ、インターネットやテレビでも言葉がすごい勢いで消費されているにもかかわらず、人はまだ言葉を求めているということ。
本書の主人公である猫は、「人間の名言になんて興味ないぼくらには、よくわからニャイな」と興味がなさそうですが、これはなかなかおもしろい現象だといえるのではないでしょうか。
人生の真理を突いた言葉、心を静かに落ち着かせてくれる言葉、傷ついた心を癒し、生きる力を与えてくれる言葉などなど、ひとことで「言葉」といってもさまざま。
しかし、なんらかの有意義な言葉と出会えることを期待して、人は名言集を手に取るのかもしれないということです。
■『ダンマパダ』とは?
そして、およそ2,500年前にブッダが各地で行った説法を聞くことは、そうした言葉と出会う貴重な体験を人々にもたらしたのだといいます。
本書で紹介されている『ダンマパダ』という経典の名は、パーリ語でそのまま「真理(ダンマ)の言葉(パダ)」という意味なのだそうです。
これは、ブッダの言葉に感銘を受けた人々によって伝承・口伝された話の内容が、後世の人たちの手によってまとめられたもの。
文字どおり、真理の言葉がいっぱい詰まった経典といえるわけです。
■幸せのために働こう!
さて、先ほどの言葉に戻りましょう。
無益な一千の言葉より、心の静まる有益な一言。
これは本当にそのとおり。その証拠に、これまでにも、さまざまな言葉(名言)が生まれてきています。
そのひとつとして本書で紹介されているのは、本田技研工業創業者である本田宗一郎さんの残した次の言葉です。
「自分の幸せのために働け」
会社のためとか、給料をもらうためではなく、自分が幸せになるように働けということ。
仕事は決して楽なものではなく、むしろ、つらいことの方が多いものだともいえるかもしれません。
しかし、「自分の幸せのため」と切り替えて考えてみれば、たしかに仕事への姿勢が変わって、「もうひとふんばりしよう」という気持になれるような気がします。
ちょっとした意識の違いによって、ものごとはよくも悪くもなるということ。
そして、その考え方の裏側には、言葉が持つ大きな力が隠れているようにも思えます。
なにより、そのことをブッダの教えが証明してくれているわけです。
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冒頭でも触れたとおり、猫が書いたというコンセプトに基づく本書には「ニャ」が多用されています。
読むまでは、「それが気になってしまうかもしれない」と思っていたのですが、実際には意外なほど抵抗なく読めてしまえます。
お正月休みにパラパラとページをめくるのに適した一冊だといえるでしょう。
(文/書評家・印南敦史)
【参考】
※宮下真(2015)『猫ブッダは悩まニャイ – しあわせに生きる84の方法』ワニブックス