謎が謎を呼ぶ・・・いわくつきの黒い暗号動画『11B X 1371』の正体に迫る
2015年6月頃、あるDVDが「GadgetZZ.com」というスウェーデンの科学技術ニュースサイトに送付されてきた。 封筒には宛先に、GadgetZZの創設者兼編集者のジョン=エリック・“ジョニー”・クラブリッシャー(John-Erik "Johny" Krahblicher)の宛名が書かれているだけ。ポーランド・ワルシャワの消印が押されている以外、差出人の情報は見当たらない。住所はおろか、名前さえ書かれていなかった。 これだけでも不気味な話だが、封筒の中に入っていたDVDはそれ以上に奇怪な代物だった。ペンで意味不明なアルファベットの羅列が書かれたDVDには、なんとも異様な動画が収録されていたのだ。 記事提供=カラパイア
こちらがその動画である。かなり怪しげな内容となっており、音声も生理的嫌悪を覚える耳障りの良くないものなので、閲覧注意、見る人は自己責任でお願いしたい。
出典: YouTube
11B X 1371
GadgetZZのジョニーはDVDに書かれた文字列をグーグルで検索したり、隠しファイルがないかどうか探したりしたが、送付元がポーランドであるということ以外、何も分からなかった。
送られてきたDVD

出典: karapaia
自分で解読するのは諦めたものの、何か謎が隠れているのではないかと考えた彼は、この動画を記事にした。10月12日付で、タイトルは「薄気味悪い謎が私たちの下に郵送されてきた」である。
この謎の動画は別の場所にも置いてあった
一方、「GadgetZZ.com」とは無関係に、スペイン人のYouTubeユーザー、ダニエル・ロデナスがインターネット上でこの動画ファイルを発見していた。DVDがジョニーの下に送られた時期より少し前の2015年5月9日、彼は「AETBX」というユーザー名で、「01101101 01110101 01100101 01110010 01110100 011001011」という二進数の題名でYOUTUBEにアップしていた。まったく同じ内容の動画である。
また投稿説明文も二進数で書かれており、そこにはスペイン語「Muerte」の文字(死神を意味する)と、同じく二進数のスペイン語で「あと1年か、それ以下しかない」と書かれていた。
さらに、2015年9月30日、アメリカ人のパーカー・ワーナー・ライトが、「AETBX」がアップロードした動画の高画質版をアップロード。それが前出の「11B X 1371」と名付けられた動画である。
これがきっかけでより多くの耳目を集めることになる。謎が謎を呼ぶこの動画は瞬く間に人々の好奇心を刺激し、ここから驚くべき事実が続々と判明することになった。
隠された画像やメッセージが明らかに
インターネットユーザが音声スペクトラグラムとして解析したところ、隠された画像やメッセージが現れた。下のスクリーンショットには、「お前はすでに死んでいる)」「Oh, You're Still Alive?(ああ、まだ生きていたのか?」と書かれているように見える。

出典: karapaia
01の配列と髑髏のイメージ

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音声スペクトラグラムからは他にも「We are the antivirus(我らはアンチ・ウイルスだ)」などの言葉が見つかったが、動画を検証していた人たちによって、動画自体にもメッセージやアルファベットが映り込んでいることが分かった。
画像から読み取れる「33 38 2e 38 39 37 37 30 39 2c 2d 37 37 2e 30 33 36 35 34 33」をGPS座標化すると、「38.897709,-77.036543」アメリカ合衆国ワシントンDC、ホワイトハウスの座標と重なる。

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手のひらの明滅はモールス信号で、「RED LIPSLIFE TENTH」。暗号に見立てれば「KILL THE PRESIDENT」となる。

出典: karapaia
やがて、動画内にではなく、動画の外でも謎を解く鍵が発見された。この動画が撮影された場所が同定されたのだ。
ポーランド・ワルシャワにある廃墟になった精神病院。

出典: karapaia
画像中央付近の目のような模様が動画でも確認できる。

出典: karapaia
誰が?いったい何のために?
動画の検証が進むにつれ、この動画は一体誰が、何の目的で制作したのかについての様々な憶測が飛び交った。
これから発売されるゲームか映画の広告、「RED LIPSLIFE」という歌を歌ったミュージシャンの宣伝では?という推測や、ホワイトハウスへのテロ予告であるという物騒なものまで。だが、この解答は、YouTubeに「11B X 1371」という名前で動画をアップロードしたパーカー・ワーナー・ライトにより明らかになる。
11月30日、パーカー・ワーナー・ライトはTwitterとFacebookでこの動画は自分が作ったものであると告白。動画を制作した目的は、「芸術的な手法で政治声明を主張すること」だったという。
パーカーが公開した、撮影時の手袋と仮面。

出典: karapaia
パーカーは自分が本物の動画製作者であることを証明するために、YouTubeの動画投稿者コメントを編集。
また、製作者でなければ知りえない情報を公開したことから、動画製作者本人であることがほぼ確定した。
こうして、一連の「11B X 1371」」騒動は終焉を見たかに見える。パーカーの動機には不明瞭な点もあるが、単なる愉快犯と考えてしまえばそれまでだ。
しかし、愉快犯だとしても不可解な点は残る。
制作者がわかっても更なる謎が残されたまま

出典: karapaia
なぜ、パーカーはスウェーデンの、しかも大手とは言えないGadgetzzにDVDを送ったのか?動画の撮影場所はポーランドだ。パーカーがポーランドに住んでいるとしたら他国に郵送したことになるし、スウェーデン在住だとしたら、わざわざポーランドまで出かけていったことになる。
そもそも、人々に注目されたいのなら、ただのイタズラと思われないような形で有名なマスメディアに送付すればよかったはずだ。
最初の動画投稿者、AETBX(ダニエル・ロデナス)の正体は?

出典: karapaia
YouTubeに初めて動画を投稿したAETBXもまた、解かれていない謎だ。彼はいったいインターネット上のどこから、この動画を入手したのか?インターネット上で手に入れたのなら、類似した動画が別の人間によってアップロードされても不思議ではないのに。「あと1年か、それ以下しかない」と意味深なコメントを残しているにもかかわらず、本人は「自分は製作者ではない」と明言している。これはいったいどういうことなのか?
Gadgetzzのバイラル動画なのか?

出典: karapaia
Gadgetzzが自らのサイトの宣伝のためにこの動画を制作したとも考えにくい。確かにインターネット上で有名になったものの、それはあくまで結果論だし、お遊びで作ったにしても悪ふざけがすぎている。正確性が命である科学技術系サイトでは、こうしたフェイク動画を自作自演するのは命取りだ。
パーカー・ワーナー・ライトの発言により解かれたと思われた謎は、逆に新たな謎を生み出すことになった。果たして、すべての謎が明らかになる日はくるのだろうか。
written by はっち / edited by parumo
記事提供=カラパイア