潜在能力を引き出したい?それなら目標を「数字」に置き換えよう
『フツーの会社員だった僕が、青山学院大学を箱根駅伝優勝に導いた47の言葉』(原晋著、アスコム)の著者は、青山学院大学体育会陸上競技部長距離ブロック監督。
2015年には、青学を史上初となる箱根駅伝総合優勝に輝いて話題を呼んだだけに、記憶に残っているという方も少なくないはずです。
しかしながら、そこに至るまでの経緯は決して安泰とはいえなかったようです。というよりも、かなり遠回りをしてきたような印象すらあります。
広島県三原市生まれ。世羅高校から中京大学に進学してからは、暇さえあればパチンコ屋に通い、彼女とのデートに精を出す日々だったのだとか。
どこにでもいるような大学生だったということになるでしょうが、ともあれ、「このままではいけない」との思いから大学3年のときに全日本インカレの5000mで3位に入るのが精一杯だったといいます。
しかも卒業後は陸上競技部第一期生として中国電力に進んだものの、足の故障により、5年目にして競技生活から引退。
以後はサラリーマンとして新たなスタートを切ることとなり、電気の検針や料金の集金などの業務を経て、営業マンとして能力を開花させたのだといいます。つまり、陸上とはまったく無縁の生活を送っていたということです。
ところが2003年には、長く低迷していた青山学院大学陸上競技部から、監督として来てほしいとの誘いを受けたのだといいます。
かくして3年契約で監督に就任するも、3年目での箱根出場を逃して監督辞任のピンチに追い込まれることに。
しかし説得の末に猶予をもらい、2009年に33年ぶりの箱根駅伝出場を果たしたというのですから、まさに綱渡りのような状態。
以後もビジネスの経験を生かした「チームづくり」「選手の育成」によって陸上界の常識を破り、8年連続出場の実績を更新中だといいます。が、かなりの苦労を重ねてきたことは否めません。
■オンリーワンの提案を用意
ところで、そんな著者は本書において、獲得した人材の潜在能力を最大限に引き出すためには、育成プランが必要だと主張しています。
具体的には、どうしても欲しい人材を獲得するためには、「オンリーワンの提案書」を用意することが効果的だというのです。
たとえば新規事業や新製品は、クライアントにしてみれば、海のものとも山のものともわからないもの。
だからそれを売り込むには、会社が用意したパンフレットだけでは不十分。「お客様のための提案です」とオンリーワンの提案書をつくってこそ、相手に本気で向き合ってもらえるというわけです。
■数字を交えて具体的に示す
そしてそれは、ほしい人材を獲得する際についてもいえること。育成プランを作成する際に意識すべきは、目標をできるだけ具体的にし、なおかつ数字に落とし込むことだというのです。
たとえば著者の場合は提示する育成プランを、大学1〜4年までの目標をA4用紙1枚にまとめるのだそうです。
5000メートル、1万メートル、ハーフマラソン、それぞれの目標をはじめ、「1年生で関東インカレの1500メートルに出場し、2年生で5000メートルに出場、3年でユニバーシアードに出場」など、その選手に実現してほしい道筋を、数字を交えながら具体的に示すということ。
■数字を道しるべにしよう!
またプランにはそうした目標だけでなく、「それまでにどのような課題を克服すべきか」を書き添え、「目標を実現するためには努力も必要だ」ということを伝えているのだともいいます。
そんな著者は、育成プランで大事なのは、組織、チームのビジョンをしっかり伝えながら、新入社員や新入部員が自分の成長を具体的にイメージできるようにすることだと主張しています。
なぜなら道しるべがあると、その後の伸び方が大きく変わってくるものだから。つまり、そのためにも、数字で表現することが欠かせないということです。
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ここからもわかるとおり、著者はスポーツの世界とビジネスの世界を柔軟に行き来して物事を考えるように見えます。
もちろんそれは、直接的な体験の裏づけがあるからですが、いずれにしてもその考え方は、あらゆるビジネスシーンに応用できることでしょう。
だからこそ、部下やチームの動かし方で悩んでいるビジネスパーソンに対して、本書はなんらかの気づきを与えてくれるはずです。
(文/書評家・印南敦史)
【参考】
※原晋(2015)『フツーの会社員だった僕が、青山学院大学を箱根駅伝優勝に導いた47の言葉』アスコム