「激安」に隠れた無理なコストダウンとしわ寄せ、スキーバス事故から得られる教訓とは
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1月15日に長野県軽井沢町で起きたスキーバス転落事故は、41名の乗客乗員の内15名が死亡し、26名が重軽傷を負うという惨事となった。
楽しいはずのツアーが、若い人たちの命を奪うという痛ましい事故となったのだ。
亡くなられた方々のご冥福を祈ると共に、重軽傷を負われた方々の一刻も早い回復を願う。
この惨事の原因究明には、まだ時間がかかるだろうが、既に見えてきた問題点について、確認しておきたい。
■ 強引なコストダウンの要請と受け容れ
この様な事故が、コストダウン競争によって引き起こされることがないように、国は安全対策としてバスの運行時間や距離に応じた下限運賃を設定している。
バスの運行の安全性を守るために必要な経費や人件費を確保させるためだ。これは一回ごとの運行に設定されているもので、トータルでつじつまが合っていれば良い、という性質のものではないことは明白だ。
しかし、今回の事故を起こしたバスの運行会社であるイーエスピーは、「その基準を守らなかったどころか把握していなかった」という杜撰さが明らかになった。
そのため、基準を下回る運賃での契約を“違法である”とは認識していなかったとしており、他のツアーでも同様の違法契約をしていた疑いが出てきた。
今回のツアーであれば、法定基準である下限額は約26万4千円になるはずだった。それが、約19万円という大幅に下回る金額で契約されていたのだ。
法定基準を下回っていただけでなく、同社自らの試算でも23万~24万円が妥当だと判断していたらしいが、ツアーを企画したキースツアーは値下げを要請していた。
悪質なのは、キースツアー側は法定基準を知りながら、価格を下げることを要請したらしいことだ。また、仲介したトラベルスタンドジャパンも法定基準を下回ることを知っていたらしい。
しかし、暖冬に紐づく雪不足による客の減少を理由に、法定基準を下回る価格で引き受けるようにイーエスピーに要請した。
発注側も受注側も、仕事欲しさと利益追求のために安全性を犠牲にしたと言える。
イーエスピーもキースツアーも、後で運賃を引き上げればつじつまがあうと考えていたことを言い訳にしているが、運行ごとの安全性を確保するために、法定基準が設けられていることを理解していないか無視したことになる。
■ 従業員管理の杜撰さ
企業は、サービスの質や企画力で勝負するよりも、安易な価格競争に向かいやすい。その結果過度なコストダウンを行う事になるが、そのしわ寄せは多くの場合従業員に対して行われ易い。
イーエスピーは、2月にも国交省の一般監査で、運転手の定期健康診断や適性診断が行われていなかったことを指摘され、今回の事故が起きる前の1月13日には、道路運送法違反で一部車両の使用停止が命じられていたばかりだ。
また、運転手の勤務記録から、国の基準を超えた超過勤務による過労運転も確認されている。つまり、人員を増やさずに、一人当たりの負担を増やすことでコストダウンしていたのだろう。

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また、今回の事故で死亡した運転手も含め、乗務員台帳が未作成あるいは未記入だった。乗務員台帳とは、運転手の免許の種類や健康状態を記録するものだ。
道路運送法では、記録を1年間保存することが義務づけられており、無理な長時間運転などを防ぐ意味があるものだ。
更に、死亡した運転手2人の出発前点呼が行われていなかった。点呼ではアルコールの呼気検査も行われるのだが、これを怠った理由が驚く。担当の高橋社長が遅刻したからだという。
遅刻自体も問題だが、そのような場合は別の責任者が代行することもできたはずだ。
しかも、事故時の土屋広運転手が別のバス会社から転職してきた際、事業者が義務づけられている健康診断も行われていなかったという。
これらのことから、同社の従業員管理の杜撰さや、従業員の負荷を軽視する姿勢が垣間見える。
■ 業務管理の軽視
今回“謎”とされているルート変更も、業務管理上の怠慢による可能性がある。
本来作成されているはずの運送引受書が、日常的に作成されていなかった可能性があるのだ。
運送引受書には、旅行会社との契約時に、料金や工程などが記される。他にも事業用車両に義務づけられている年4回の定期点検整備の書類も揃わなかった。点検が適切に行われていたかどうか怪しいのだ。
また、ツアーが(事故のため)終了していなかったにもかかわらず、終業点呼簿に運行終了の印鑑も押されていた。
以上のことから、安全確保のための手続きが形骸化していたことが見えてくる。
■ 事故の教訓は何か
以上は、本稿執筆時点で見えてきた問題点の一部だが、今後まだまだ出てきそうだ。
今回の事故は、業者の参入に対する規制緩和が原因だと見る向きがある。
確かに規制緩和による競争激化が、更なる低価格化を呼び、安全性を犠牲にしている面があるかもしれない。
そうなると、事故の遠因には日本の経済状況や経済政策にもあると言える。
しかし、既に述べたように、参入規制が緩和されたとしても、国は安全性が犠牲にならないように法定基準を設けるなど、幾つもの義務を業者に課している。
そうなると、今回の事故から得られる教訓としては、「法令違反に対してより強制力がある処分を行うこと」かもしれない。
例えば、文書警告に留まっている行政処分を、営業停止処分などにするなどだ。
また、国土交通省は「国土交通省ネガティブ情報等検索サイト」という悪質業者の情報を公開しているが、旅行会社が顧客に対してバス運行会社を明示していないため、顧客はこのサイトを活用できない。
これに対しては、旅行会社が、使用しているバス運行会社が行政処分を受けていないかどうかを、顧客に明示する責務を負う仕組みを用意することも、検討すべきかもしれない。
負担すべきコストをないがしろにしてしまうと、安全性を身に危険を及ぼすことを思い知らされる事故となった。
【参考・画像】
※ 国土交通省ネガティブ情報等検索サイト – 国土交通省
※ leonardo2011 / Gajus – Shutterstock