「高市発言」を批判したテレビキャスターたちの”甘えの構造”

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電波停止の可能性に言及した「高市発言」が波紋… Photo by Zengame
電波停止の可能性に言及した「高市発言」が波紋… Photo by Zengame

 鳥越俊太郎、岸井成格、大谷昭宏、田勢康弘、田原総一朗ら、各局のニュース番組や討論番組でお馴染みの顔、顔、顔——。この面々が先日、何やらお怒りのご様子で記者会見を開いた。いわく、

「高市早苗総務大臣が、国会の衆議院予算委員会において、放送局が政治的公平性を欠く放送を繰り返したと判断した場合、放送法4条違反を理由に、電波法76条に基づいて電波停止を命じる可能性について言及した。(略)私たちはこの一連の発言に驚き、そして怒っている」

 これは政府による言論への圧力であり、「ケンポー違反で、報道を委縮させる」と強い抗議を表明したのだ。なるほど字面だけ見れば、そうかもしれない。政府が報道に介入して招いた悲劇は、古今東西たくさんの例がある。……ところが彼らがドヤ顔で横断幕を広げた画像とニュースが出回ると、雑誌メディアやネット上では批判が渦巻いたのだ。

「本当に偏向しているんだから、放送法違反だろうよ(注1)」
「おまえらマスコミの意見イコール民意ってのは、カン違いだからね」
「権力批判はいいけど、民主党政権時代に同じことやったのか?」

 例えば岸井氏がアンカーを務めているTBS「NEWS23」は、安保法制について賛成意見と反対意見を報じた時間の配分が、7%と93%だったという調査結果がある。

 また民主党政権の時代(注2)には、こんな酷いメディア恫喝があった。

「政府は電波を止めることができるんだぞ。電波が止まったら、お前らリストラどころか、給料をもらえず全員クビになるんだ(注3)」(輿石東幹事長)
「(オフレコを)書いたら、その社は終わりだからな!」(松本龍復興担当大臣)

 またまた民主党政権時に、平岡秀夫総務副大臣が電波停止命令適用の可能性について言及している。つまり、今回の高市発言とまったく同じ。

 ……要するに実際に偏向して放送法に違反しているし、権力批判も自民党のみが対象で民主党をかばい、同様の発言をしたのにダンマリを決め込んでいた。そんな人たちが何を言っても説得力が無い、ということだ。

■テレビキャスターたちの「甘えの構造」

 それだけではない。メディアは権力を監視すべきと立派なことを言いながら、その権力から記者クラブ制度を始め、様々な利益供与を得ているのが大新聞と系列のテレビ局では無いか? テレビ局を数社の独占状態として、新規参入を規制してくれてるのも政府だ。

「放送局の電波は、国民のものであって所管する省庁のものではない」(声明文より)

 なるほど、おっしゃる通り。では異常な低料金(注4)で提供されている電波料を、諸外国同様にオークションにかけるべきだろう。そうすればテレビ局の競争も激しくなって健全化し、国民の懐も温かくなる。

 言論の自由は何よりも大事なものであり、守るためには<自立・自活>して闘う覚悟が必要となる。会見を開いたキャスターたちの姿は、さながらミルクを飲ませてもらいながら、「ママがボクを叱るなんて許せまちぇん」と言っている赤ん坊のよう。怒っているのは、「私たち国民」の方だ。

(注1)放送法…4条に「政治的に公平であること」を求めている。
(注2)民主党政権時代…東氏、松本氏、平岡氏の役職は発言当時。
(注3)クビになるんだ…記者とのオフレコ発言。
(注4)異常な低料金…全局あわせて34億円強。全局の総営業収益3兆1150億円強の約0.1%。

著者プロフィール

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コンテンツプロデューサー

田中ねぃ

東京都出身。早大卒後、新潮社入社。『週刊新潮』『FOCUS』を経て、現在『コミック&プロデュース事業部』部長。本業以外にプロレス、アニメ、アイドル、特撮、TV、映画などサブカルチャーに造詣が深い。Daily News Onlineではニュースとカルチャーを絡めたコラムを連載中。愛称は田中‟ダスティ”ねぃ

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