世界初!? 脳コントロールで義手の指を個別に動かせた!
Credit: Guy Hotson
ジョン・ホプキンス大学の研究者が、脳コントロールによって義手の指を、独立して個別に動かすことに成功したようだ。
この報告は、『Journal of Neural Engineering』に掲載されたもので、ジョン・ホプキンス大学のウェブサイトで紹介されている。
■ 電極から信号を取得できる!?
これは、もちろんケガや病気などによって腕を失った人のために、その機能を取りもどす技術の研究だ。ただし、今回の実験は、手も腕もある若者が被験者になったという。脳マッピングを行い、自分の腕と手をバイパスして、義手を動かす実験を行ったのだ。
「私たちは、この実験が、脳でコントロールする義肢を使って、特別なトレーニングを行わずに、すぐに指を動かすことができた初の例だと思っています」とNathan Crone教授はいう。
「この技術は、通常、人がテニスボールを握るときのように、人工の指をひとつひとつのユニットとして動かして、つかむ動作ができるような義手を可能にするものです」
この実験の被験者となったのは、てんかんを持つ青年だ。彼は発作のもととなる場所をつきとめるために、ジョン・ホプキンス病院で脳マッピングを受けることになっていた。
脳の働きを記録するための電極を外科手術によって脳に埋め込むので、義肢を動かすための信号も同時に取り出せるのだ。
はじめに、クレジットカードほどのサイズの長方形のフィルムの上に配置された128のセンサーが脳の腕と手をコントロールする部位に設置された。それぞれのセンサーは脳組織の直径1mmほどの範囲を計測できる。そうして、被験者がそれぞれの指を動かすときに、脳のどの部位が働いているのかが記録された。
また、それと同時に、各指に独立して振動が伝わるようにしたグローブを被験者に装着してもらい、触覚に関係する脳の部位の電気的な活動も計測された。これによって脳の中におけるそれぞれの指のつながりも調べることができた。
■ 薬指と小指の秘密
これらのデータを集めたうえで、研究チームは、脳のそれぞれの信号に対応して義手の指が動くようにプログラムし、被験者の脳の電極信号に義手を接続して、親指、人差し指、中指、薬指、小指をそれぞれ個別に動かしてもらうように指示をした。
すると、見事に指を動かすことができたという。
「今回、脳の働きを測定するのに使った電極によって、われわはこれまで使っていたデータより広い領域の脳の皮質について知ることができ、より詳細な脳の空間的マッピングができました。その精密さによって、指を個別に動かすということが可能になったのです」と、研究チームのGuy Hotson氏。
一方、最初この脳コントロール義手の動きの正確性は76%だった。しかし、薬指と小指の動きをつなげたところ、正確性は88%にまで上がった。Crone教授によれば、薬指と小指のコントロールというのは重なり合う部分があり、多くのひとは、この2本の指を一緒に動かしているのだという。恐らくその性質がこの正確性の向上に表れているのだ。
なお、このレベルの正確性を得るために、事前のトレーニングはまったく行われておらず、全部の実験は2時間以内で終了したという。
Crone教授は、この技術が実際の義肢に応用できるようになるには、まだ何年もかかり、しかもコストがかかるものになるという。更なる脳マッピングとプログラミングが必要だというのだ。
脳に電極を埋め込む必要があるとなると、実験もそうそう日常的にできるものではないだろう。また実用化するハードルも高いと思われる。
しかし、少し前まで、腕を失ってしまったら、その機能も完全に失われてしまうというイメージだった。それが現在では、脳の研究やロボット技術の進化によって、限定的にではあるが動かせる義手の研究が次々と登場している。
実用化される時代も訪れそうだ。
【参考・画像】
※ Johns Hopkins Medicine
【動画】
※ Mind-Controlled Prosthetic Arm Moves Individual ‘Fingers’ – YouTube