なかなか言い出せない「いつか帰ってきて」も歌でならストレートに伝えられた! 門出を祝う親たちのサプライズに卒業生が感涙《福井県大野市》

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門出のときを間近に控えると、その場所で過ごしたとりどりの思い出が頭に浮かび、誰しも切なさで胸がいっぱいになるもの。しかも、長く過ごした土地を離れることになる、高校卒業という区切りにおいてはなおさらです。 もちろん、旅立ち前の感傷に浸らずにおれないのは、楽しい時間を共有してきた「見送る側」も同じこと。新しい土地での生活をスタートさせた後も、ふるさとを誇りに思う気持ちを忘れることなく、いずれは地元に戻ってきてほしいと願っています。

豊かな自然、ゆったりとした時間の流れは大野の宝

そんな日下さんが手掛けた楽曲のタイトルはずばり、『大野へかえろう』。回数にして約50回、のべ3か月もの間、このまちに滞在したことで、肌で感じた大野の魅力をそのまま歌詞に落とし込むことができたといいます。

まず歌い出しは「山が世界を切り離し 世界はこの町だけのよう」。日下さん本人が、「同じ会社の大野出身の先輩に、『高校の時にまさに感じてたことやわ』って言ってもらえました」と明かしますが、冒頭のみならず、全編、大野にぴったりと寄り添うことで生まれた言葉で綴られているのがわかります。

さらに歌詞を見ていくと、「自然にあわせて時は過ぎ 人はゆっくり生きている 夕日が田んぼを照らしてる 里芋の葉が揺れている」と大野での暮らしを美しく描写したかと思うと、続く「小さな町の子どもたち 夢を求めて出ていくの」では聴き手の胸を小さくざわめかせます。

もちろん、そのざわめきがあってこそ、やがて到来するサビの「広い世界に出るといい いつでも大野は待っているから」によって、聴き手はより一層強く胸を打たれるのです。

大野市にそびえる標高1,523メートルの荒島岳(あらしまだけ)。別名を大野富士とも。

さて、歌ができあがったものの、その歌の持つ力を聴き手にフルに感じ取ってもらえるかどうかは、歌い手が音楽と向き合う姿勢にかかっているといっても過言ではありません。そこで、楽曲を収録したCDを保護者に事前に配布すると同時に、卒業式を目前に控えた2月には、計2回の練習の機会を設けて参加を募ったといいます。

しかし、年度末も近い忙しい時期とあって、参加してくれた保護者はごくわずか。サプライズが成功するかに関して、不安がまったくないとはいえない状態だったのだとか。

とはいえ、卒業式は待ってはくれません。まもなくして本番当日を迎えることとなり、卒業証書授与、校歌斉唱と順調に式典は進み、いよいよがんばってきた成果をお披露目する瞬間が近づいてきました。

子どもの幸せな未来を願う大人たちのやさしい歌声が、胸の奥底まで沁みていく

そして遂にそのときがやってきます。

合図となったのは、「卒業生のみなさんは後ろを向いてください」のアナウンス。耳を傾けた生徒たちが振り向いた先には、真剣なまなざしの父兄たちが緊張の面持ちで立っています。

やがて流れ出したピアノの柔らかな音色は、体育館全体をやさしく包み込み、みんなの胸を高揚させていきます。

そして、ついにサプライズがスタート…。

クライマックスでは、「夢を追い 友と出会い 恋をして 大きくなれ 時には 思い出してほしい わたしたちがいることを」と子どもを未来へと後押ししながらも、「大野へかえろう 言い出せないから歌にする」と隠し切れない本心をさらす親たちの姿に、感極まって涙ぐむ生徒もちらほら。

演奏が終わってもしばらくの間、鳴りやまない拍手が会場を満たしていたので、その音に紛れてこっそりと嗚咽をもらした人もいたかもしれません。

このときの様子について、実際に式典に参加した日下さんご本人に話を伺ったところ、「曲が進むにつれて身体も心もあたたまってきたのか、声量が徐々に大きくなって、同時に、居合わせた人たちの心が突き動かされていくのを感じることができました」とほっと一安心した様子。

なんせ日下さん自身、「人だけじゃなくて自然もとてもやさしいまち。山なんてまるで、人間に協力してくれているかのよう」と表現するほど惚れ込んでいる大野のために、聴く人の心を動かす一曲にしたいとの想いに溢れていたのです。

その根底にあった思いについて日下さんは、「『大野へかえろう』プロジェクトをスタートした当初から、“形として残るなにか”をつくりたいと考えていたんです」と説明。いわば、新しい形のUターン施策です。

今まさに旅立とうとする高校生に、耳に残る歌としてまちの魅力を届けることで、「いつかはここに帰ってきたい」と思ってもらうことができるのです。

「いつか絶対戻ってきたい」「想いを歌で届けられた」

実際、式典終了後に卒業生に感想を求めたところ、「大野から出るのがちょっと嫌になりました」「歌を聴いて改めて、大野って自然に恵まれているし、いい人ばっかだよなって思いました。いつか絶対戻ってきたいです」と誰もが自らの内にあるふるさと愛を再確認した様子。

また、歌声を披露した当の本人たちも、「一生懸命歌いました。子どもに届いたと思います」「面と向かっては言いにくいことだから、歌で伝えることができてよかった」「これからもずっと歌い継がれる曲になってほしい」とご満悦。

さらに、在学中の新3年生からは、「来年歌われたらやばい」「お母さんに来年歌って!って言いました」との感想が飛び出るほど反響があったことから、サプライズをきっかけに、関わったすべての人が大野のすばらしさを実感できたことがわかります。

「僕自身、滞在中に、大野の活性化のためにおもしろいことを試みている多くの人に出会ったことで、このまちをより好きになりましたが、そういうことを知ってから外の世界に出るのと知らないまま出るのとでは、その後の人生が大きく違ってくると思うんです」と日下さん。

その違いは必ずしも、「大学卒業後の選択肢にUターンがあるか」ということにあらず。たとえば、「今の私があるのは、あのまちで過ごした時間があるから」と思えることによって、その土地で生まれ育った自分の人生のことが、もっといとおしく感じられることだってあるはずです。

大野へかえろう WEBサイト大野ポスター展の記事はこちら

提供:福井県大野市

その切なる願いをユニークな手法で形にしたのが、今年3月、福井県立大野高等学校を卒業した卒業生の保護者一同。今月3日に催された実際の卒業式で、みんなの想いをしたためたオリジナルソングをサプライズで大熱唱したのです。

まちの人たちの期待を一身に背負い、「届けたい想い」を美しい歌詞に昇華させたのは、コピーライターの日下慶太さん。2015年に「大野へかえろう」プロジェクトがスタートして以降、足繁くこのまちに通い、「大野ポスター展」などのユニークな施策を展開し続け、今や大野を「これから先もずっと帰ってきたい場所」と言い切るほどの大野LOVERです。

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