北の住民登録制度とは (2/2ページ)
この組織は、2014年3月9日に行われた最高人民会議代議員選挙に投票できなかった未登録居住者、離職者などを徹底的に監視せよとの金正恩氏の3月12日の指示に基づき作られた。
徹底的な監視が行われるのは、未登録者(行方不明者)が脱北した可能性が高いためだ。家族に脱北者がいると、監視が強化されるばかりではなく、成分が悪くなり、出世もできなくなるなど様々な不利益が生じる。
住民登録課はそこに目をつけ、脱北者家族から多額のワイロを受け取り、脱北者が行方不明者ではなく死亡者であると書類を偽造することに加担していたのではないかという見方が出ている。北朝鮮の住民監視制度の根幹を揺るがす事態だが、実はこのようなことは北朝鮮各地で行われている。
その手口について、実際に住民登録課に勤めていた経験のある脱北者が詳しく証言している。 2008年に脱北して現在は韓国で暮らしているキム・シヨンさんはかつて、ある市の人民保安部住民登録課で勤務していた。
ある住民は、祖父が植民地時代まで地主で、朝鮮戦争の時は米軍や韓国軍に協力していたとの内容が、住民登録台帳に記録されていた。そのため、いくら本人に能力や財力があっても成分が「敵対階層」に分類されているため、出世は全く見込めない。
そこで、住民登録課の副課長とグルになって、今までの家族の記録をすべて抹消し、本人は労働者の息子で、大学を出て、軍隊でも職場でもまじめに働いているとの書類を偽造した。副課長は日本円で5万円のワイロを受け取った。今ではワイロの相場が1000ドル(約11万3000円)まで上がっている。
個人の住民登録に関する書類は、必ずバックアップを取ることになっており、慈江道の前川(チョンチョン)郡にある秘密アーカイブに収められている。戦争が起きて、各役場に配置された記録が失われることに備えた措置だ。当局の執念を感じさせるが、住民統制は戦争ではなく、カネの力で崩れつつある。