その行為はしつけですか?弁護士に聞いた「虐待」にあたる4つのキケンな行動とは
お子さんが言うことを聞かないとき、悪いことをしたときなどは、怒鳴ったり、時には叩いたり、おやつや食事を抜きにしたりなどの罰を与えることもあるかと思います。とくに、お母さんが忙しいときや疲れているときは、ついイライラしてしつけとしての罰も行き過ぎてしまうことがあるかもしれません。
しかし、行き過ぎたしつけとしての罰は“虐待”となり、刑事罰や親権停止・喪失の対象にもなるのです。つい最近のニュースでは、父親が幼い子どもを罰としてプラスチックケースに入れて押し込んで死なせたという衝撃的な事件もありました。
そこで今回は、どこからが“虐待”のラインなのか、また、実際虐待を行った場合に両親にはどんなペナルティが待っているのかという点を弁護士の観点から解説していきます。
■しつけと「虐待」の違いって?
まず、「虐待」は
(1)身体的虐待(殴る、蹴る、投げ落とす、激しく揺さぶる、部屋や狭いところに拘束するなど)
(2)性的虐待(子どもへ性的行為を行う、性的行為を見せる、子どものわいせつな写真を撮影するなど)
(3)ネグレクト(食事を与えない、子どもをひどく不潔のままにさせる、自動車内に放置するなど)
(4)心理的虐待(言葉による脅し、無視、子どもの前でDVを行う、きょうだいへの虐待行為を行うなど)
の4種類に分類・定義されています。
一方、現在の法律では子どもに対するしつけの定義はありませんが、親権者は、子どもの監護・教育に必要な範囲内での懲戒を行うことが認められています。学校の先生と違い、体罰が一律に禁止されているわけではありません。
したがって、子どもにけがを負わせない程度に軽く叩く程度であれば「虐待」には当たらずしつけの範囲と認められ得ますが、子どもの身体の安全、生命、健康、健全な精神的発育を害するような行為(親として通常すべきことをしないことを含む)はしつけではなく“虐待”となるでしょう。
■「虐待」を行った親権者へのペナルティは?
平成25年4月1日から5月31日までの間に児童相談所が受理し、同年9月1日時点までの間に身体的虐待とネグレクトによって子どもの生命に危険が生じた事例は17例であり、平成25年4月1日から平成26年3月31日までの子どもの虐待死事例(心中を除く)は36例あります。
身体的虐待とネグレクトはお子さんの生命を脅かすものですから、犯罪行為に当たる可能性が高くなります。子どもを強く叩くことは暴行罪や傷害罪ですし、食事を与えないなどの生命や健康維持に必要なことをしないことは保護責任者遺棄罪や保護責任者遺棄致死罪に当たります。
前述したとおり、最近では父親が幼い子ども2人をプラスチック製の収納ケースに入れて閉じ込めて放置し、1人が亡くなってしまった事件がありました。父親はしつけのために行ったと言っていますが、この行為は窒息死または圧迫死を招く危険な行為ですので“虐待”に当たることは当然ですし、保護責任者遺棄致死罪も成立するといえます。
■直接虐待をしていない親も罪になる!?
なお、ここで注意が必要なのは、父親が日常的にこのような行為をしていることをわかっていながら止めなかったり子どもを助けなかったりした母親にも保護責任者遺棄致死罪が成立する可能性があることです。直接虐待をしていない親は、虐待を止めたり、児童相談所に通報したりすることが求められます。
そして、虐待を行った親権者は刑事罰の対象となるのみならず、児童養護施設への一時保護となり子どもに会えなくなる、親権停止・喪失の対象となることもあります。
忙しさや子育ての疲れなどから安易に“虐待”を行うと以上のような不利益が待っています。
子どもの健全な成長の面からしても、過度なしつけや虐待は逆効果です。お子さんにイライラしたとしても、いったん深呼吸をしたり、家族や友人に相談したり、夫にも子育てに参加してもらうなどして、自分自身を落ち着かせることが大切です。
将来の子どもへの影響のみならず、ご自身にとってもストレスフルな子育ては何のメリットになりません。虐待へと発展しないためにも、しつけのライン引きをしていきましょう。
【参考・画像】
※ 子ども虐待による死亡事例等の検証結果(第11次報告の概要)及び児童相談所での児童虐待相談対応件数等 – 厚生労働省
※ Anurak / PIXTA
【著者略歴】
※ 木川 雅博・・・星野法律事務所(港区西新橋)パートナー弁護士。損害賠償・慰謝料請求、不動産の法律問題、子どもの事故、離婚・男女間のトラブル、墓地・お寺のトラブルその他、法人・個人を問わず様々な事件を扱っています。