東大が体現する「粘りの野球」で”史上初”Aクラスの可能性
東京六大学野球で「奇跡」が起こった。東京大学(以下、東大)が47連敗中の明治大学(以下、明大)をサヨナラで撃破したのである。
初回に2点を先制した東大は、先発の柴田叡宙(3年)が2失点、後を受けた有坂望(2年)が無失点で粘り切り、迎えた9回裏、2死二塁から3番山田大成(3年)がど真ん中のストレートを右中間にはじき返した。
東大の明大戦勝利は2004年秋の開幕戦以来。卒業後、日本ハムに進んだ松家卓弘投手が2安打完封した2004年秋以来で、何と12年振りの勝利となった。
翌日の第3戦、来秋のドラフト候補と目されるエース宮台康平(3年)が打ちこまれ惜しくも勝ち点は得られなかったが、前日のヒーロー山田が3ランを放つなど、これまでの東大にはみられない戦い方が目を引いた。
過去10年の東大のリーグ戦勝敗は以下の通り。

昨春、94連敗を脱出してニュースになった東大は、秋も1勝を挙げ10年ぶりに春秋1勝ずつをマーク。その戦いぶりが注目された今春リーグ戦は、開幕戦の早稲田大学戦で宮台が13奪三振の4安打完投で0対1と好発進。2カード目の明大戦も宮台が8安打を許しながら0対1。ともに勝ち点こそ得られなかったが、粘り強い野球を見せている。
弱いチームが勝つには粘り切るしかない。「エラーをせず、接戦に持ち込んでワンチャンスをモノにする」。そんな野球を、東大は体現しはじめているのだ。
■赤門旋風の再現なるか!
2カードが終わり勝ち点なしの現時点で、東大が目指すは史上初のAクラス(3位以内)。過去、もっとも好成績を挙げたのは1981年春だった。
開幕戦で小早川毅彦や西田真二(ともに広島カープ)、木戸克彦(阪神タイガース)らを擁する法政大学を6対2で撃破(その後連敗で勝ち点なし)した東大は、続く早稲田大学を1対0、2対0の連続完封。3カード目の慶応義塾大学戦も初戦こそ0対1で落としたが、4対1、3対1と連続勝利で、早慶両校から勝ち点を奪うという快挙を達成した。
この時点で明治に次ぐ2位につけ「初優勝か」と〝赤門旋風〟を巻き起こした。
そして迎えた4カード目、対立教大学戦初戦を10対5で大勝。2戦目を1対3として迎えた3戦目は両チーム無得点のまま延長戦に突入。12回裏、1死一、二塁のチャンスを迎えるも、ヒット性の当たりを立大の好プレーに阻まれ得点ならず。そのまま引き分けとなり、4戦目を0対1で落とした東大に勝ち点はつかず、最終的に4位(6勝7敗1分)に終わった。
勝負事に「たられば」は禁物だが、延長戦での当たりがもし抜けていれば勝ち点3となり、史上初のAクラスはもちろん、初優勝を懸けた明大戦に向けて赤門旋風は最高潮に達したことだろう。
2015年終了時点で246勝1580敗55分、勝率.135。10戦して2勝するのがやっとの東大だが、今季、選手たちは食事量を増やして体力を向上させている。
投手を中心に守りきり、数少ないチャンスをモノにする。「弱くても勝てる」戦い方を再現するような今季の東大野球部に、注目していきたい。
- 文・小川隆行(おがわたかゆき)
- ※編集者&ライター。『プロ野球 タブーの真相』(宝島社刊)シリーズなど、これまでプロ野球関連のムックを50冊以上手がけている。数多くのプロ野球選手、元選手と交流がある