開館5年で300万名が来場!塩尻市立図書館に何が起きたのか? (2/3ページ)
同市は、筑摩書房の創業者・古田晁氏の故郷。太宰治、井伏鱒二といった作家たちと交流を深め、現代の文学思潮に少なからぬ影響を与えた人物で、今なお塩尻市民の誇りの源になっているといいます。
同地は歴史的にも“寺子屋”が多かった土地柄でもありました。こうして、書き手をはじめとした「担い手」と「読み手」である市民とが一緒になって本の可能性を考える「本の寺子屋」は出発したのです。
2015年度末までの3年8か月間で約50回の講演や朗読会などのイベントが行われ、受講生はのべ5400人にも上っています。
■2人のキーマンが本の寺子屋を実現
なぜ、いち地方都市の市立図書館がこれほどの企画を継続的に運営できているのか。その陰には2人のキーマンの存在がありました。
1人は、2007年から「本の寺子屋」事業がスタートする2012年春まで同図書館の館長を務めた内野安彦さん。
28年務めた茨城県鹿島市役所からヘッドハンティングされた内野さんは、鹿島市でも務めた図書館長の職に就任。当初、塩尻についての知識を得るため地元の古書店を巡り、古書店主と相談しながら本をそろえるという、非常にユニークな図書館運営を行っていました。
そして、新たなあゆみを始めていた同図書館を、もうひとりのキーマンが訪ねます。
長く出版界に身を置き、河出書房新社で季刊誌「文藝」編集長も務めた長田洋一さん。第一線を退き長野に移り住んだ後も、「いい本」ではなく「売れる本」ばかりがつくられる出版界に危機感を抱いていました。
そんな2人が塩尻の地で出会い、「本の寺子屋」の構想がスタート。長田さんのもつ出版界での人脈を生かし、さまざまな企画を実現しています。
■塩尻市立図書館は本の復権を目指す
「本の寺子屋」が目指すものは「本の復権」。本書にはこうあります。
「(『本の寺子屋』は)地域に生きる市民の生活の中心にもう一度、本を据え直し、読書を習慣化させるための方策を、書き手、つくり手、送り手、読み手が共同して創り出そうという仕組みである。