【不朽の名作】下品な大股開きが一番印象に残る「マルサの女」 (2/2ページ)

リアルライブ

脱税疑惑で、おばちゃんがガサ入れを受けている最中に、潔白を証明するために「女はココに隠すんじゃー!!」と全裸になって大股開きになるシーンだろう。

 わめいて服を脱ぎ、さらに下着を投げ捨て、布団に寝転び、それに驚愕するマルサの花村(津川雅彦)の表情まで流れるようなシーン移動に、爆笑間違いなしだ。しかも隠し金庫の鍵を、亮子が台所から見つけるというオチつき。このシーンは、亮子がマルサになって初めてのガサ入れでもある。ここで、笑いと同時に、今まで以上にとんでもない相手と戦わなければならないことを示唆する役目もこのシーンが担っており、わかりやすく税務署と国税局の違いを表現している。英樹をラブホテル経営で財を築いた人物にしたのも、ガサ入れするシーンで、アレの真っ最中の部屋の扉を片っ端から蹴破る場面を作りたかったからかもしれない。

 他のシーンも、わかりやすくすることにかけて細かく配慮されている。別に税金用語が分からない人でも、下品なシーンや、笑いの中で語られる金の隠し場所や、秘密書類の話などで、すんなり物語に入れるようになっており、エンターテインメント系の作品として、苦痛なく鑑賞が可能だ。

 また、悪役が立っているのもこの映画の楽しいところだ。英樹の金の流れを突き止めるのが、本作の大枠のテーマとなるが、最初は完全に悪役の雰囲気で登場するのに、終盤あたりから、息子とのコミュニケーションに迷う父親になってしまうあたりが、どこか憎めなくて魅力がある。前半に登場する、伊東四朗演じるパチンコ店社長も、かなりどうしょうもない人で、胡散臭い行動が笑いを提供する。他にも、税務署にヤクザの組長・蜷川喜八郎(芦田伸介)がカチコミした際の演説なども、皮肉が効いていて、かなりの見どころとなっているだろう。

 あと、なんといってもこの映画と言えば、亮子がなにか行動する際必ず流れるあのBGMだ。おそらく作品を知らなくても、同作のBGMならば、バラエティー番組などで聴いたことがあるのではないだろうか? おそらく「元はこの映画のBGMだったのか」と驚くはず。そう言った意味でもこの作品はオススメかもしれない。

 ちなみに、伊丹監督の女主人公+職業という構成は『スーパーの女』や『ミンボーの女』と、後にシリーズ化していくが、ちょうど伊丹監督が亡くなった1997年に、男女雇用機会均等法が改正され、性別による職種差別が撤廃の方向に進んでいった。もう少し伊丹監督が長生きしていれば、もっと面白い「○○の女」が誕生したかもしれない。例えば悪質な生活保護者に対抗する福祉事務員が活躍する作品とか、女性車掌か運転手を主人公にして、鉄道業界に踏み込んだ作品とかもあったかもしれないと思うと、今更ながら残念な気持ちになる。

(斎藤雅道=毎週土曜日に掲載)

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