中国圏からの「年金機構」へのサイバー攻撃で読み解くべきもの|やまもといちろうコラム (2/2ページ)
■グローバルな犯罪組織にいかに対応すべきか
ところが、お話がグローバルな犯罪組織だということになりますと、これはもう大変な話になります。何しろ、状況に応じて求められる仕様が変わりますし、即応するような仕組みはそもそも年度ごとの調達スケジュールの中には盛り込みようがありませんから、問題が起きたら対処、という話にならざるを得ません。道を進むほどに、関係者の死体が増えていきます。
しまいには、2020年までに戦死するべき技術者が何百万人足りない、だからボランティアを動員するのだという凄まじい赤紙令が検討されかねない状況になってきました。正直な話、セキュリティ関連の技術に知見の乏しいプログラマーを何人連れてきたところで、それはカカシにしかならないのが現実です。
セキュリティに気を使うべき大企業でも、会社のシステムに入るのに平気で古いバージョンのAndroidで入れるように設計してあったり、本社は最新のシステムなのに支社のシステム改修が間に合わないという理由でわざわざセキュリティに穴を開けて対応している企業が続出するわけです。そういうところが、発電所や港湾施設、空港、鉄道、上下水道といったライフラインに関係する業務をしているということは、その存在自体が脆弱性を際立たせることになるわけであります。
こうなると、上のレイヤーは外交、下のレイヤーは少年少女の世界という、なんか一昔前のラノベもかくやという世界に陥ってきます。国ごとの安全保障ではもはやサイバー攻撃の脅威に対抗できないとなれば、他国が専門家を養い、日本がその専門家をセキュリティ対策の傭兵で雇うという中世暗黒時代のイタリアみたいな世界に立ち戻ります。きょうび、ランツクネヒトとか口にする人は少ないと思いますし、エリア88が描いた冷戦の世界も過去のものなのですが、結局はこのセキュリティ会社、それを保護する国家、その国家同士のセキュリティビジネスという構造がどんどん露になってきます。
さらには、本当の意味でセキュリティについて革新的で、柔軟な思考を持つ最高の技術者、というのは昔のようにひげを生やした40代50代のナイスミドルの世界ではなく、むしろ高専でソフトウェア開発にハマったり、個人的技術を試してみようとうっかり行政機関や企業のシステムに入り込んでしまう少年少女のほうが最先端だったりするわけです。こういう子供たちに対して、国家や治安当局が膝を曲げ社会のために君たちの力を貸してほしいと懇願するという、これまた最近あまり流行らない類の陳腐なラノベの世界が広がるわけでありまして、世の中大変なことになってきたよね、と思うわけです。
結局、日本年金機構については他にも様々な問題が横たわっていることは、逆に流出してしまったデータの構造を読むことでだいぶ明らかになってくるわけですが、これを語りだすと本論が大変なことになってしまうのでこの辺で。
著者プロフィール

ブロガー/個人投資家
やまもといちろう
慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数
公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)