不正会計発覚から1年 世界中がドン引きした東芝事件の“真犯人” (2/2ページ)
このことがマーケットからの資金調達を困難にさせ、前述の有力子会社の売却の動きにつながったのです」(同)
ある経済通は「東芝が真に健全な経営状態になるには自己資本比率30%台になる必要があるが、そのためには年間1兆円近くの資金が必要で、さらに年間1000億円の純利益を10年間続けなければならない。しかし、現在のようなペースで事業を売却することは考えにくく、常識的に考えてこのノルマを達成するのは難しいと思う」と述べた。
東芝をこんな状態にしてしまった不正会計。そのきっかけは旧経営陣の強いプレッシャーにあったと結論付けられているが、ある識者は「不正の内容から比較して、あまりにも失う代償が大きかった。なぜこの程度の額の粉飾を数年にもわたり行っていたのか疑問が残る」と語る。さらに、「この事件の問題の大きさは東芝の経営危機のみならず、日本の会計制度に対する国際的信用を大きく落としたことにある」と続ける。
そこには、東芝の強引な経営陣のプレッシャーに飲み込まれ、不正会計をスルーしてしまった“真犯人”とも言うべき新日本監査法人に大きな責任があった。
「監査対象であると同時に大口得意先であるため、その意向をどうしても受けてしまう。同法人はオリンパス事件でも粉飾決算を見抜けませんでしたが、今回の不祥事のダメージはさらに大きいと言えます。金融庁から3カ月の新規業務停止と課徴金21億円を命じられただけでなく、既存顧客の流出ですでに多くの顧客が別の監査法人に乗り換えました。ある役員は『監査法人を変える上での業務上の負荷は承知だが、投資家から不信感を抱かれないメリットの方がそれを上回る』と語っています」(経済記者)
新日本監査法人は先頃より、全顧客企業を対象にビッグデータを使い会計処理の不正をチェックする仕組みを導入するなど、役割の回復に全力を注いでいる。日本の会計監査制度に対する国際的信用が失われてしまった以上、他の監査法人にとっても対岸の火事ではなく、制度そのものの経年劣化というテーマにどう取り組むべきかが問われる。
東芝は6月22日に開かれた定時株主総会において、不祥事の発覚以降、代表執行役社長を務め構造改革を進めてきた室町正志氏が退任し、代表執行役副社長の綱川智氏が新たな代表執行役社長に就任。実質上の新経営体制となった。
「日本を代表する電機メーカーの復活と、日本の会計監査に対する信頼を取り戻すためにも、健全な経営手腕を期待したいですね」(前出・ウオッチャー)
“政治とカネ”の話はウンザリだが“企業の不正”も大概にしてほしいものだ。