【ツレが産後ウツになりまして】第5回:アタシにだけなつかない…妻が壊れる<前編>

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【ツレが産後ウツになりまして】第5回:アタシにだけなつかない…妻が壊れる<前編>

3年に及ぶ不妊治療、2度の流産の末にやっと授かった赤ちゃん! 幸せな育児ライフのはずが……。

母乳が出ない(『おっぱいが出ない!沈みゆく妻<後編>』)という一難が去った後、今度は“わが子が妻にあまり懐いていない”という問題が発生したのだ。

自身の不妊治療奮闘記を綴った『俺たち妊活部』の著者・村橋ゴローが見た、最愛の妻が産後ウツになっていく…壮絶な産後育児をお伝えします。

■赤ちゃんが「妻にだけ」なつかない

あれは生後3週間ぐらいだっただろうか。“赤ちゃんが妻にだけなつかない”という、悲しい事実に気づいたのは。

ウチの赤ちゃんは、よく泣く子だった。夜泣きといわず、1日中ずっと泣いていた。しかし僕が抱っこすると泣き止み、毎晩の寝かしつけは僕の仕事となっていた。

義父母との息の詰まる共同生活のなか、育児に関してこれといった勲章を手にしていなかった僕にはそれが嬉しく、積極的に泣き止ましに参加した。

それを受け、妻は「アタシも上手くなりたーい」とおどけていたが、いくら抱っこしても泣き止まない日々が続くと、次第に焦りを覚えていった。

これだけでは、妻が単なる“寝かしつけ下手”なだけに映るかもしれない。

しかし泣いた赤ちゃんを妻があやすとただ単に泣き止まないというものではなく、妻が抱っこしていることが原因のように、さらに火が付いたように泣き叫ぶのだった。

これはもう、“妻にだけなつかない”と見るしか他になかった。

■「赤ちゃん、アタシのこと嫌いみたい」

そんな地獄があるだろうか? 

腹を痛めて産んだ子が、その母親になつかないなんて……。

しかもわが家の場合、3年に及ぶ不妊治療、2度の流産を経て授かった、奇跡の赤ちゃんなのだ。

そこまでしてやっと抱きしめたわが子が、なつかないなんて……。

妻の気持ちを案ずると、身が引き裂かれる思いになった。それでも彼女は涙を飲みながら、懸命に育てた。

いくら赤ちゃんが母乳の飲み方が下手でも、夜泣きが激しくても、抱きしめて笑顔を見せてくれたら、すべてが救われる。。だからこそ育児も頑張れる。

しかし妻の場合、その赤ちゃんから笑顔すらもらえない。何を糧に、頑張ればいいのか。

「アタシのこと、嫌いみたい」

力なく笑う妻に、かける声などなかった。

■「ねえ、コレ捨てていい?」

彼女が焦っているのには、もうひとつ理由があった。それはあと1週間もすれば、自分の両親が田舎に帰ってしまうからだ。

育児に関して、妻は母親を頼りきっていた。その育児の救世主が、もうすぐ帰ってしまう。授乳も泣き止ましも、上手くできないのに。ああ、あと1週間ですべてをマスターせねば。そんな恐怖に煽られていたのだろう。

ある日の午前中、わが子はまたギャン泣きを始めた。僕がすぐに抱っこし泣き止ませようとすると、妻は僕から赤ちゃんを奪い取り、こう叫んだ。

「アタシが寝かしつける!!」

もう何度目のチャレンジだろう。

妻に抱かれた赤ちゃんは、ママに抱っこされたことが気に食わないと言わんばかりに、あらん限りの声量をしぼり出し泣き叫んだ。それでも妻は立ったまま、赤ちゃんを小刻みに左右に揺らしていた。

30分が経ち、それでも泣き止まない。

見れば、妻も泣いていた。

1時間が経過し、それでも泣き止まない。赤ちゃんの泣き声は、もはや枯れ声になっていた。

意地になった妻は、それでも泣き止ましをやめようとしない。

まだ体重3キロとはいえ、1時間も抱けば、その細腕には重たかろう。腰にもくるだろう。しかし母親としての意地なのか、妻はやめない。

ふたりの戦いは遂に1時間半を超え、泣き疲れた赤ちゃんは、それでもか細い声でまだ泣いていた。

ママが、そんなに嫌なのか。その瞬間だった。真っ赤に泣きはらした目をこちらに向け、妻が言った。

「アタシやっぱり、赤ちゃんから嫌われてるみたい」

わが家は、6階建てマンションの6階に住んでいる。

「ねえさあ、もうこれ、ベランダから捨てていい?」

一滴一滴積もったストレスがコップから溢れ、遂に妻が壊れてしまった。

次回、「アタシにだけなつかない…妻が壊れる 後編」をお届けします。

【参考・画像】

※ 村橋ゴロー(2016)『俺たち妊活部』(主婦の友社)

※ Lopolo、Konstantin Tronin/Shutterstock、evgenyatamanenko / PIXTA

【著者略歴】

※ 村橋ゴロー・・・72年、東京都出身。大学生のときライターデビュー。以降、男性誌から女性誌、学年誌など幅広い分野で活躍。千原ジュニア、田村淳、タカアンドトシ、次長課長、高橋克典など多くの芸人、俳優陣の連載構成を手掛ける。3年に及ぶ、自身の不妊治療奮闘記をまとめた著作『俺たち妊活部』(主婦の友社刊)が好評を博す。また主な構成/著作に、『すなわち、便所は宇宙である』シリーズ(千原ジュニア著・扶桑社刊)、累計200万部突破した『GO!GO!バカ画像シリーズ』、『裏モテの秘策』(ともにKKベストセラーズ刊)などがある。結婚以来11年間、炊事・洗濯・掃除をこなす兼業主夫でもある。Twitter:@muragoro

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