【ツレが産後ウツになりまして】第6回:アタシにだけなつかない…妻が壊れる<後編> (2/3ページ)
「アタシは母親なんだ」
「アタシは母親になるんだ」
彼女の努力をしっているから僕は、ふたりを抱きしめるしかなかった。
「りえちゃんは何も悪くない。よくやっているよ」
そう思い、ただふたりを抱いて3人で泣き続けるしかなかった。
■泣き続けるわが娘へ母親からの言葉
それから2~3時間は経っただろうか? 出かけていた義両親が帰ってきた。
彼らは、孫が娘にだけなついてないことを知っていた。赤ちゃんに背を向け布団の中で泣き続けるわが娘を見て察知したのか、オカンはゆっくりと、そしてやさしくわが娘に語りかけた。
「この子にとって、母親はあんたひとりだけなんだよ。何があっても、この子の母親はあんたしかいないんだよ」
翌日、義両親は田舎に帰った。朝イチ、赤ちゃんを連れて最寄り駅までお見送りへ。
「いろいろ、ありがとう」
この言葉に嘘はなかった。
そりゃあ嫌味もたくさん言われ、1ヶ月にも及ぶ共同生活は息が詰まるものだったけど、オトンとオカンがいなければ子どもの世話など僕らふたりにはできなかった。
オカンに感謝を告げると、
「もう父親なんですから、あんたがしっかりせにゃあ」
オカンはこの1ヶ月間見せてくれなかったやさしい笑顔で、僕にそう言ってくれた。
■「かわいい、赤ちゃんかわいい」
その夜、久しぶりに親子3人となった僕らは川の字になり寝そべっていた。
妻は昨日のことを「ごめんね、ごめんね」と赤ちゃんに詫びていた。そして、とても柔らかい笑顔で「かわいい、赤ちゃんかわいい」と言いながら、何度も何度もその頬をなでていた。そしてボソッと、言葉を落とした。
「ねえ、赤ちゃん。あなたがいくらママのことを嫌っても、ママはあなたのことを抱きしめ続けるから。かわいい」
そうつぶやくと、彼女は目を真っ赤にはらした。
それは昨日までの悲しみのものではなく、母親にならんとする強い決意の表れのように見えた。それを見て、なぜか俺も泣けた。