田中角栄 日本が酔いしれた親分力(13)運命の女性との出会い (2/2ページ)

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 立候補するというその男は、茶色のカシミヤのコートに、茶色のマフラーを首に巻いて、長靴を履いていた。さすがに立候補を決意するだけはある。27という歳にはおよそ似合わない、威風堂々とした貫禄を持ち合わせていた。その顔には、チョビ髭が、まるでとってつけたように、チョコンと乗っている。

 昭は田中をひと目見ると、正直なところびっくりした。

〈本当にこの人、27歳なの? 歳をごまかしているんじゃないかしら〉

 田中は、髪が黒々とさえしていなければ、50と言っても通ってしまう。

 田中は田中で、初対面の昭のことを印象深く胸に刻みこんでいた。後に、田中は昭に話した。

「俺はお前に一目惚れしてしまったんだよ。だけど、その時にはお前には婚約者がいたしなァ‥‥そのまま引っさらおうかと思ったことすらあった。しかし何より、お前は堅気の娘だったから」

作家:大下英治

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