親日思想が原因で破局?中国の若者に蔓延する歪んだ”愛国思想”

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中国のSNSで反響を呼んだイデオロギーが正反対のカップル (C)孫向文/大洋図書
中国のSNSで反響を呼んだイデオロギーが正反対のカップル (C)孫向文/大洋図書

 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。2016年7月、中国のSNSに投稿された一つの相談は国内で大きな反響を呼びました。内容は「愛国主義者」の女性が彼氏と結婚できるかというものです。

■大の日本びいきの彼氏と反日主義者の彼女

 投稿者は20代前半の女性で、中国では彼女のような1990年代以降に生まれた若い世代は、「未熟な共産主義者」=「完全に赤く染まっていない」という意味で「小粉紅」(ピンクちゃん)という愛称で呼ばれます。小粉紅はインターネットの影響を受け、五毛党(中共政府を肯定する意見を書き連ねて収入を得るネットユーザー)が多いのですが、投稿者もその内の一人と推測されます。

 投稿内容を読むと、現在女性は高校時代に出会った同年齢の男性と交際しているのですが、ひんぱんに日本に旅行に出かけるなど男性の家族は大の日本びいきであるそうです。しかし愛国思想に染まった女性は同時に反日主義者であり、彼と結婚した後は親日という「洗脳」を解くつもりです。女性は互いに愛し合っているため結婚しても問題はないと語っていましたが、大半の返答は別れることを推奨したものでした。

 返答は、「早く別れろ! 五毛党の相手は五毛党だけだ!」、「独裁者の子飼いと民主主義者は一緒に生活できない」、「五毛党と結婚したら三代目まで不幸になる」、「今は恋人がいないが、五毛党や共産党員は恋愛対象外だ」と、イデオロギーが正反対の人物同士が成功するはずはないという意見が多数を占めていました。またこれらの意見を読めばわかるように、多くの人々は男性の親日思想を否定せず、五毛党の排他的な愛国思想を批判しているのです。

 実をいうと、僕自身が今回の例と非常によく似た経験を持っています。僕が20代前半のころ、投稿者と同じく愛国主義者の女性と交際していたのですが、当時から僕は親日感情が強く、日本法人の中国支社に勤務して日夜日本語を勉強する日々をすごしていました。彼女の前でも僕は日本製品を身につけ日本のアニメやドラマのことばかりを話題にしていたのですが、そんな態度に嫌気がさしたのか、ある日彼女は「あなた(孫)は中国人よ!」と「私と日本、どちらが好きなの!?」と問い詰めてきたのです。僕自身は「自国愛」と「親日」は決して相容れないものではないという認識です。しかし中国の愛国思想とは「=反日」であり、親日家は「裏切り者」という認識が浸透しています。

 その後も、僕は中共政府の数々の横暴、民主主義や選挙制度の素晴らしさを彼女に説いたのですが、彼女は理解をしめさず「確かに今の中国は問題が山積みだけど、それでも祖国よ! 悪口はいいかげんにして!」と中共政府を擁護していました。彼女は中国に民主主義制度をとりいれることは外国の模倣だと反論していましたが、中国政府が掲げる共産主義も元々は外国で生まれた思想です。そして2005年、小泉純一郎元首相が靖国神社を参拝した際、互いに意見が食い違い対立したことで、僕は彼女と別れました。破局の原因となった共産主義、中共政府のプロパガンダ教育を僕は激しく恨みます。

 上述のような民主主義者と共産・社会主義者の価値観の違いをネタにした話が日本にあるそうです。これは僕のTwitterのフォロワーの方が教えてくれたのですが、桂三枝(現・桂文枝)師匠が30年ほど前に語った創作落語で資産家の女性とホームレスの男性の恋愛をテーマにした話です。落語の中で女性は男性の様子を見て「タフな衣装」、「野生的な生活」と皮肉めいた魅力を感じ、二人は結婚するのですが、実は男性の目的は楽して豊かな生活を手にいれることで、数年後二人は離婚したという結末です。つまり二人を別れさせた要因は貧富の差ではなく、右派、左派という思想の違いだったのです。

 中国における愛国思想とは、すなわち社会・共産主義信仰と同意義のものです。日本ではSEALDsなどの市民団体に所属している、あるいはSNS上で「五寸釘ぶちこむぞ!」などと現政権の批判を繰り返す人物などが、中国の五毛党に近い思想の持ち主と言えるでしょう。

 さらに現在、日本の左派的な若年層が「アルバイト時給の大幅な値上げ」、「奨学金の無償化」などを訴え連日デモ活動を行っています。これは創作落語のホームレスの男と同じく、「何もせず保証された生活を送りたい」という社会主義者の願望に他なりません。

 僕は自身の経験から、思想が共産主義的な方向に偏向する人物は恋愛対象にしないほうが無難だと思います。恋愛とは互いの価値観や思想を理解しあい合致したもの同士しか成就しないものです。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の33歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。新刊書籍『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)が7月31日に発売予定。

(構成/亀谷哲弘)

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