18才の亡命…金正恩氏から逃げ出すエリートたち (2/2ページ)
金正恩氏をこき下ろす北朝鮮の新人類
先述のように、国際数学オリンピックについては、北朝鮮メディアも報じていることから、参加者は国内でも屈指の優秀な学生たちだ。少年は、北朝鮮の自然科学を支えていく有望株として、当局から期待され、好環境で勉学に励んでいただろう。逆にいえば、それだけ優秀な人材だったゆえに、亡命を選んだということも考えられる。
例えば、北朝鮮ではインターネットは限られた層しかアクセスできないが、そのなかには研究者も含まれる。もしかすると、少年は北朝鮮にいる時から、ひそかにインターネットにアクセスし、亡命のための「リサーチ」をしていたのかもしれない。また、今回の大会に参加した6人中、4人が2年連続の参加だ。昨年から、亡命する決意をして、準備をしてきたということも考えられる。
以上は、あくまでも推測だ。しかし18年前、筆者が中朝国境滞在中に出会ったコチェビ(ストリート・チルドレン)たちは、皆がたった1人で信じられない距離を移動して、時には知恵を絞って、危険を顧みず、北朝鮮を脱出してきた猛者揃いだった。
時代背景や立場などはまったく違う。当時のコチェビと違って少年は、それなりに裕福な環境で育っただろう。それでも、厳しい環境であることには間違いない。なによりも、北朝鮮の青少年らの意識は年々変化しており、金正恩党委員長がセレクトした制服に対してケチョンケチョンにけなすぐらいだ。そうした北朝鮮の新人類なら、今回のようなことも「十分にやり遂げる」と思うわけだ。
少年の今後はさて、今後問題になるのは、この学生の処遇だ。
香港は、憲法にあたる基本法で高度自治を保証されているが、国防と外交だけは中国政府の所管と規定されている。香港中文大学の朝鮮半島研究者、鐘楽偉講師は香港TVBのインタビューで「もはや香港だけで解決できる問題ではない。中国政府と韓国政府が協議する外交問題だ」と述べた。
中国政府は、脱北者を北朝鮮に送還する措置を取っているが、それが香港にも適用されるかは未知数だ。ちなみに2005年にも、北朝鮮女性が香港の韓国領事館に駆け込み、亡命を申請している。女性は韓国への入国を果たしたが、その経緯は明らかにされていない。
学生が領事館に留まる限りは、香港政府も中央政府も手が出せないため、滞在が長期化する可能性もある。いずれにせよ、無事韓国入りができたとしても、年齢などが考慮され、詳細は公にならないだろう。しかし、いずれ「18才の亡命」を決意したその動機について、少年の口から話を聞いてみたいものだ。