日本人の“見分ける力”に脱帽!1000種以上とも言われる「伝統色」の豆知識 (2/2ページ)
その中でも、面白いエピソードが残るのが「山吹色」です。
山吹色の由来であるヤマブキは、4月頃に花を咲かせるバラ科の植物で、山吹色という色の名称は平安時代から用いられていたと言います。その鮮やかな黄色から付けられた別名は「黄金色」。小判を思わせる色であることから、江戸時代にはなんと、賄賂に渡す小判の隠語として「山吹」という言葉が使われたそうです。
今も昔も変わらず女性を美しく見せる色として愛される「紅赤」
赤系にも多くの色が存在しますが、「紅」の字が付く名前が多いのが、1つの特徴です。6〜7月頃に黄色い花を咲かせ、次第に赤みを帯びていく植物「ベニバナ」に由来し、赤い色を作る染料として用いられました。赤色の染料を用いた品と言えば口紅です。
しかし、本物のベニバナを原料とした口紅は、かつて非常に高価だったそうです。中でも、わずかに紫色を含んだ鮮やかな赤色を指す「紅赤」を作り出すには大量の原料が必要だったため、最も価値ある色として憧れの的でした。
現代の口紅の多くは、化学的に合成された染料によって作られていますが、紅赤色のリップは今でも人気。そのほか、鮮やかな赤色を帯びたビールや焼酎などにも、紅赤の名前を見ることができます。
伝統芸能とともに息づく!歌舞伎の垂れ幕にお馴染みの「柿渋色」
さて、最後にご紹介するのが「柿渋(かきしぶ)色」。灰色がかった茶色のことを指し、果物の「カキ」を原料とした色です。熟す前のカキは、あまりにしぶくて食べられたものではありませんが、しぶさの正体である「カキタンニン」が酸化することで茶色い色みとなります。
カキタンニンには防水・防腐・防虫効果があることから、天然のコーティング塗料として重宝されてきました。しかし今となっては柿渋の塗られた傘など、伝統工芸品として一部地域に残るばかりです。しかし実は、テレビで見掛ける機会が少なくない色でもあります。
歌舞伎でお馴染みの3色幕、正式には「定式幕(じょうしきまく)」と呼ばれますが、ここに使用された茶色こそ、柿渋色です。とりわけ現代でも活躍する市川一門が好んで使用していた色であることから、歌舞伎好きの間では「団十郎茶(だんじゅうろうちゃ)」と呼ばれることもあります。
今回、ご紹介したように、日本の伝統色の多くが「植物の色」に起因しています。これは四季折々の表情を見せる、日本ならではの季節のうつろいがあるからでしょう。そして、四季にうつろう色彩を生活に取り入れ、わずかに明度の違う色ごとにも名前を付けてしまう日本人の“見分ける力”に驚かされ、誇らしい気分にもなりますね。