金正恩体制に「ブチ切れ」始めた北朝鮮の女性たち (2/2ページ)
外貨の流通を禁止したいのならば、取り締まるのではなく、ウォンの信頼を取り戻すために現実的な経済措置を採ればよいのだが、党資金の確保やミサイル開発に余念が無い北朝鮮当局にその余力はなく、意味のない取締りを繰り返すのが精いっぱいだ。
そもそも、ウォンの信頼低下を決定付けた「犯人」は金正恩氏の父、故金正日総書記だ。2009年11月に行った突然の「貨幣改革(デノミネーション=通過切り下げ)」によって、庶民の多くがコツコツと貯めてきたウォン建ての貯金を失った。ウォンを100分の1に切り下げ、交換に上限を設けるという極めて非常識な措置は「ウォンは紙くずである」という認識を植え付け、庶民を外貨預金へと走らせた。
当時、誰よりも怒りを覚えたのは市場で商売をしてきた女性たちである。職場に出勤せねば処罰を受ける上に、コメ1キロも買えない給料しか貰えない男性に代わり、女性たちが商売で家計を支え、血のにじむ思いで貯蓄をしてきたからだ。
最も恐ろしい存在このように、北朝鮮当局と女性、特に50代~60代の女性は、長い対立関係にある。かわいい息子を栄養失調がまん延する軍隊に10年もとられる上に、夫は党や行政が割り当てるタダ働きに駆り出され、休めば「労働教化」という名の強制労働が待っている。そんな中、実生活上の苦労のほとんどを女性が担ってきた。
人口の5%を超える多数の餓死者を出した90年代後半の大混乱「苦難の行軍」から、20年あまりが経つ。その間に積み重なった怒りたるや、爆発寸前といっても過言ではないだろう。現に、今回の事件を伝えてくれた取材協力者のパク氏は女性についてこう語る。
「人々の意識は大きく変わりました。特に、朝鮮の女性が苦しい生活が続く中で鍛えられ、今ではどれほど恐ろしい存在になったのか分かりませんよ」。
女性たちが笑える国にできるならば、金正恩政権も安泰だろう。だがそれは、宿敵・米国に勝つよりも難しいチャレンジであることは間違いない。