金正恩式恐怖政治は「権力の空洞化」を生み出す…祖父から仕える側近も容赦なし (2/2ページ)

デイリーNKジャパン

正恩氏が、金日成を始祖とする抗日パルチザンの一族「白頭の血統」を、体制正当化の拠り所としているだけに、重要視せざるをえないのかもしれない。

例えば、現在、リオデジャネイロで行われている五輪に派遣されている崔龍海(チェ・リョンヘ)氏は、女性問題などで数々のスキャンダルを起こしてきたにもかかわらず、失脚と復活を繰り返してきた。政治家としてよりも、白頭の血統を象徴する存在として不可欠なのかもしれない。

信念捨てれば歴史のゴミ

一方、パルチザン2世といえど決して安泰とはいえないようだ。彼らを代表する呉振宇(オ・ジヌ)前人民武力部長の息子である呉日晶(オ・イルジョン)氏、故金日成氏の護衛司令官を務めた呉白龍(オ・ベクリョン)氏の長男で呉琴鉄(オ・グムチョル)氏、そして次男の呉鉄山(オ・チョルサン)氏の朝鮮労働党内における地位が低下したという分析が韓国メディアから出ている。

こうした動向を裏付けるものとして、朝鮮労働党の機関紙・労働新聞は昨年11月、「革命の信念は自然に遺伝されるものではない。信念を捨てた人間は、かつての社会的地位があったとしても、歴史のゴミとして捨てられるのが革命闘争の教訓」という社説を掲載。「パルチザン2世」に対して暗にけん制していると見られる。

金正恩体制が抱えるジレンマ

冒頭の問いに対して筆者なりの見立てを述べると、金正恩氏は「ある程度」の権力固めはできていると思われる。

そもそも、北朝鮮体制は全体主義と独裁主義、そして世襲体制の三つを併せ持った現代史上、類を見ない「首領独裁制」という国家体制を前提にしている。指導層で多少の権力闘争はあれど、首領独裁制を脅かすほどのものではない。ましてや「軍のクーデター」などありえない。

しかし、ここに金正恩体制が抱えるジレンマが生じる。民主国家とちがい、独裁体制における権力固めに不可欠なのは「恐怖政治」だ。これが、エリート層の無気力と脱落、そして脱北を生み出し、結果的に、権力の空洞化を生み出しかねない。強権を振るえば一時的に権力を固めることができる、しかし中長期的に体制が弱体化せざるをえないーーこれが、金正恩体制が抱える最大の不安要素ともいえる。

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