「人肉事件」の悲劇再現か…北朝鮮で「人災飢餓」発生の情報 (2/2ページ)
金正恩氏は、体制を安定させるために、軍人や平壌市民などの「忠誠分子」だけを厚遇、一部地域や階層にのみ、物資を集中的に投資しているからだ。
また、農村の人々が市場経済化の波に乗り遅れていることも、格差拡大の一因との指摘もある。
商売には元手が必要だが、そのためには個人耕作地で収穫した余剰農産物を市場で売って利益を得なければならない。ところが、売る農産物ももなければ、買う消費者もいないため、黄海道の農村では毎月1日、11日、21日にしか市が立たない。これでは資本の蓄積は到底望めない。
幹線道路、鉄道から遠く離れた地域ではインフラ整備が極度に遅れており、外から人やモノが入ってこない。情報を得ようにもラジオや携帯電話を買うカネもない。持っていたとしても電気がない。ナイナイづくしなのだ。
当局は、黄海道の人々からコメを絞りとったが、その行き先であるはずの兵士たちにはまともに食糧配給ができていない。
両江道の情報筋によると、軍では1食に出されるコメの量は250グラム(約1.4合)と規定されているが、実際は100グラムから150グラム、ひどいところでは70グラムのコメ、炊いたご飯にすると茶碗1杯分しか配給されない。流通過程での横流しが横行しているからだ。
三池淵(サムジヨン)郡のある部隊では、副食(おかず)がないため、指揮官の命令で山に山菜採りに出ている。ところが、栄養失調で力が出ず、すぐにへたり込んでしまうという。空腹に耐えかねて、民家に盗みに入る兵士もいるが、逃げる力もなく、家の中に横になる者もいる有様だ。
一方、多少元気のある兵士たちは、国境を超えて中国の民家に強盗に入っている。凶悪事件の多発で、中国当局は脱北者への取り締まりを大幅に強化している。密輸や出稼ぎのための脱北ができなくなれば、現金収入が減り、地域経済に悪影響を及ぼす。また、密輸が困難になったことで、コメ価格も上昇し、飢餓に陥っている黄海道の人々まで影響が及ぶ。
北朝鮮の独裁体制のやることは、万事がこれである。非合理かつ独善的な行政のしわ寄せが庶民に及び、膨大な犠牲が生まれているのに、権力はまったく顧みない。
無茶苦茶なスケジュールで進められる建設事業や、交通インフラの不備による大規模事故の続発も、根は同じところにある。
そして、そのような悪政の弊害が積み重なり、国全体が機能不全に陥っているため、どこかでひとつ問題が生じれば、ドミノ倒しのように拡散してしまうのだ。