労働時間を減らした方が作業効率が上がる。スウェーデンで一日6時間労働が実験的に導入され効果を上げる
さて日本政府も、月末の金曜は午後3時に退社できるという「プレミアムフライデー」構想を検討していることが発表となったが、これはどちらかというと、買い物や旅行など個人消費を促す為のものだ。ところかわってスウェーデンでは、労働時間そのものを短縮させようという動きがある。
スウェーデンはこれまでも、仕事と私生活のライフバランス向上を目指すイニシアティブの実験場であった。国内のオフィスの多くでフレックスタイム制が採用され、育児休暇をはじめとする子育て関連の政策は世界でもっとも充実する。
今回各都市で実験的に導入された施策はその一歩先を行き、1日6時間、週30時間労働を義務付けるものだ。4月半ばに公開された評価報告では、初年度において欠勤が大幅に減少し、生産性や労働者の健康が改善されたと結論している。
1日6時間労働を開始したゴセンバーグ市の場合
「40年間、週40時間労働(1日8時間労働)がとられてきましたが、現代社会では病欠や早期退職が増えています」とゴセンバーグ市議会議員ダニエル・ベルンマーさんは語る。現在彼らは今後40年で幸福を維持できるような労働生活のあり方について議論を重ねているという。
しかし多忙を極める都市部からは、理想主義に目がくらんだ過ちだという反対意見も聞かれる。仮にゴセンバーグ全体が1日6時間勤務を採用してしまえば、同都市は経済的な競争力を失い、財政難に陥るだろうという。
「一部のヨーロッパ諸国を危機に陥れているのは、この類の経済的思考法ですよ」とゴセンバーグ市副市長のマリア・ライデン氏。彼女は政府は職場に介入すべきではないと主張し、実験反対キャンペーンを展開する。働かざる者食うべからずというわけだ。
フランスで実施された1日7時間労働の場合
似たようなモデルはフランスでも賛否両論となっている。同国では社会主義系政府によって2000年から35時間勤務(1日7時間労働)が義務化された。企業側はそれによって競争力が削がれ、雇用や社会的費用などに関する厖大なコストが発生したと主張。これについて、労働組合がこうした政策がなければ雇用者は過度に長い勤務を強いるだろうと反論している。
フランスの同政策にはいくつもの抜け道があり、現在ではヨーロッパの平均と同じ週40時間労働が普通だ。しかもオランド仏大統領は同法の緩和を求める圧力に直面している。

スウェーデンの労働時間短縮実験は小規模事業者の間で一定の効果を上げている
こうした懸念があるとはいえ、スウェーデン国内の小規模事業者を対象とした労働時間短縮の実験は止まらない。そして、その多くで離職者の低下、創造性や生産性の向上といった結果が得られている。それは追加の雇用コストを相殺するに足るものだという。
「労働時間を短縮すれば雇用を増やす必要があると考えていましたが、全員の効率が上がったためにそうはなりませんでした」とストックホルムのインターネット関連スタートアップのマリア・ブラスさん。彼女によれば、労働時間が短いので、時間内に仕事を片付ける方法を日頃から考えるようになっているのだとか。無駄なメールや会議で人の足を引っ張ることはない。同社は20名の従業員を抱え、毎年利益が倍増している。
ヨーロッパ最大級の病院であるゴセンバーグのサールグレンスカ大学病院でも、極度の疲労や高い欠勤率の対策として同様のアプローチを試した。昨年、89名が所属する整形外科の看護師と医師の勤務時間を1日6時間に変更。これを補填するために15名のスタッフを新規に雇用し、診療時間も延長した。その結果、月に1,200万円ほどコストが増えたが、病欠はほぼなくなり、作業効率も向上している。

「これまでは80%の力でしか働けませんでした。今では余裕をもって休めますし、子供たちと一緒に過ごす時間も増えました。元気を取り戻すことができましたよ」と看護師のガブリエル・ティクマンさんは語る。
この整形外科では診療時間を20%延長し、それまで他の病院にかかっていた患者を確保し、利益を上げることに成功。手術の待ち時間が月単位から週単位になったおかげで、職場復帰が容易になり、病院とは関係のない他の職場での病欠も減らす結果となった。
いち早く1日6時間労働を取り入れたのはトヨタサービスセンター
同病院は付近にあるトヨタのサービスセンターをモデルとした。ここは従業員のストレス軽減と顧客から寄せられた待ち時間が長いという苦情への対策として、13年も前から6時間勤務を採用していたのだ。これによって営業時間を伸ばし、新規顧客を獲得することに成功している。

「かなり贔屓目に見ても、従業員は8時間勤務体制のときと同等の量をこなしていますし、それより多いことだってあります」とサービスセンター所長。重労働の現場だが、従業員には十分な活力があり、仕事がはやいために多くの利益を上げることができている。
さらに従業員からは、勤務時間が短くなったおかげで仕事の満足感も高まったとの声も聞こえる。仕事は効率的になり、家で家族と過ごせる時間が増えたことの効用だ。
大規模事業者では失敗するケースも
6時間勤務が小規模事業者では有効性なことがあると明らかとなっている一方で、より規模の大きな事業者はその採用に焦ってはいない。スウェーデンの別の都市では、以前労働時間短縮を試験的に運用したが、結局廃止されたことがある。250人の市職員がいるキルナでは、高コストに加えて、同プログラムの対象とならなかった職員からの反感もあり、16年間続いた6時間勤務制を取り止めた。
via:.lostateminor・nytimesなど translated hiroching / edited by parumo