夏の甲子園・我が心の決勝戦(2)4番エースの堂林翔太を極限まで追い込んだ4万人の魔物 (2/2ページ)
すると、伊藤が放った打球はレフト前への2点タイムリー、さらに続く代打の石塚雅俊までもが初球をレフト前に弾き返し、ついにスコアは10-9の1点差となってしまう。
この回、2死から5点を奪い取った日本文理。なおも一、三塁と一打同点、長打が出れば逆転のチャンス。そして打席には、この回2度目の打席となる若林尚希。球場全体から怒とうの若林コールが鳴り響くなか、森本の2球目を捕らえた若林の打球は、まさに「カキーン!」というこれ以上ない快音とともに三塁方向へ。日本文理ナインも観客も、そして中京ナインも「抜けた!」と思った痛烈なライナーは次の瞬間、ファウルフライを落球した三塁手の河合のグラブでガッチリ掴み取られていたのだ。
優勝目前でマウンドを降りたエースの堂林は、優勝決定後のインタビューではまるで敗者のように「すみません」と悔し涙を流していた。この決勝戦での異様な体験が“プロでは野手一本”という決意を後押しさせるきっかけとなったのは間違いない。
(高校野球評論家・上杉純也)