実験室で再現されたブラックホールのモデルにより放射線の放出を証明(イスラエル研究)

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実験室で再現されたブラックホールのモデルにより放射線の放出を証明(イスラエル研究)
実験室で再現されたブラックホールのモデルにより放射線の放出を証明(イスラエル研究)

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 スティーブン・ホーキングの有名な予言に、「ブラックホールは放射線を放ち蒸発する」というものがある。

 彼がこの理論を発表したのは42年前のことだが、実際に証明することは難しかった。現在の技術では放射線が弱すぎて観測できず、原子物理の分野ではその存在証明が”聖杯”と言われるほどだった。

 だがイスラエルの科学者がこのホーキング放射を史上初めて観測することに成功した。

 1974年、ホーキングは量子効果のためにブラックホールは完全な暗黒ではなく、放射線を放ち、そのために質量が減るはずであると理論立てた。しかし、放射線が微弱であるために、これまで実際のブラックホールでこれが観測されたことはない。

実験室で作り出されたブラックホール

 そこでイスラエル、ハイファにあるイスラエル工科大学の物理学者ジェフ・スタインハウアー(Jeff Steinhauer)教授は、ブラックホールの音響モデルを作り上げ、光の代わりに音をホーキング放射に見立てて研究を進めた。これは2009年から製作が開始された、レーザーにいくつもの鏡、レンズ、磁気コイルを備えた手作りの装置によって作られたものだ。

 観測はボース=アインシュタイン凝縮という、極低温の原子の塊が1つの原子のように振る舞う物質の量子状態においてなされた。実験で、スタインハウアー教授は自身の手で作り上げた”ブラックホール”の縁で粒子が振る舞う様子を観察。この縁は事象の地平面という、時空が後戻りできず、そこ超えると事象が外側の観測者に影響を与えることができなくなる地点に相当する。

 ここからフォノンという音の粒子のペアが事象の地平面の真空空間に自然発生することが確認された。その一方はホーキング放射としてブラックホールから離れ、他方はブラックホールに落下する。広いエネルギーのスペクトルを持つこのペアとの相関関係によって、ホーキング放射を検出することができた。スタインハウアー教授によると、ホーキング放射は1.2ナノケルビンのホーキング温度を特徴とするという。

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 『ネイチャー・フィジクス(Nature Physics)』誌に掲載された本研究は、ホーキング放射に相当するものが実験室の”ブラックホール”で観測できるという、今日もっとも強力な主張を提示するものだ。

ブラックホールから解放されるホーキング放射の熱的分布が観測される

 「量子的真空のゆらぎによって刺激され、類似ブラックホールから解放されるホーキング放射の熱的分布を観測できます」と同教授。これによってブラックホールの熱力学に関するホーキングの予言が確認されたという。

 実験では、ペア内のホーキング粒子とパートナー粒子は”量子もつれ”でつながっていることが示された。高エネルギーのペアはもつれている一方、低エネルギーのペアはもつれていないという。この量子もつれは、ブラックホールに落ちた物理情報が消失するという情報のパラドックスの議論における重要な要素を立証する。

 さらに、ホーキング粒子とパートナーの量子もつれがほどける結果、ファイアウォール(ブラックホールに落ちる観測者が出くわす事象の地平面に存在するとされる高エネルギー粒子の壁)があることも裏付ける。

 スタインハウアー教授は、量子のホーキング放射が実在するという証拠が見つかったことで、宇宙の法則を解き明かす旅路の終わりに一方近づいたと話す。ひょっとしたらこの発見が、その代表的な理論を作った功績によって、スティーブン・ホーキングのノーベル賞受賞を後押しするかもしれない。理論物理学者の功績が本当に認められるのは理論が実証されたときである。


via:journal Nature Physics/ translated & edited by hiroching


 



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