1ポイントの執念の奪い合い----王者ジョコビッチは力尽き、ワウリンカがグランドスラム3度目のV [全米オープン] (2/2ページ)
ワウリンカが第2ゲームをブレークし、その後1-3としたところだった。エンドチェンジではないから、急を要する治療のためにのみ許されているのだが、ジョコビッチはそれを主張した。「爪がはがれて血が出ていた」という。最初の2セットで見せていた動きのキレは衰え、明らかに異変を物語っていた。
しかし、1ゲームに2本のダブルフォールトをおかしたり、ファーストサービスの確率が50%を切るセットが2つもあるようなサービスの不調は、足のケガのせいではなかった。夏に手首を痛め、肘にも痛みが広がり、それらをかばおうとしてフォームが乱れたという。この夏のケガの代償だったジョコビッチ陣営が大会前に不安視していたことが、すべて表れ始めたのだ。
それにしても5割程度の力に落ちても、ジョコビッチからポイントを取るには情けは禁物だった。最後までリスキーなショットで攻め続けなくてはならず、メディカルタイムのあとも実際ブレークされそうな場面もあったが、耐え、3時間55分の試合を締めくくった。
一昨年から毎年一つ、異なるグランドスラムのタイトルを手にしてきたワウリンカは31歳。実に効率的に生涯グランドスラム(キャリアを通じて4つのグランドスラムのすべてで優勝すること)にリーチをかけた。もうワウリンカを「ビッグ5」と呼ぶことに異論を唱える者はいないだろう。しかし本人は首を横に振る。
「ビッグ4とはかけ離れているよ。彼らがどれだけ長い間、あの位置を守っているか……僕は3つグランドスラムを獲ったけど、ノバクは1年に3つ、マスターズも5つ勝ったりする。とうてい及ばない」
世界1位も目標とするところではない。ジョコビッチのようなコンスタントな成績には叶わないと思っているからだ。
「いつも言っているように、その日できる最大限の努力をして、一歩一歩、一日一日頑張っていくだけだ」
謙虚な姿勢は、ロジャー・フェデラー(スイス)という存在が身近にいたせいだろうか。これでツアーの決勝11連勝。気負いのない31歳は、それゆえまだ大きな可能性を秘めている。
(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)