良からぬ妄想(侵入思考)に陥ってしまった時、その秘密を共有できるネット検索エンジンが暴走の手助けになる

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良からぬ妄想(侵入思考)に陥ってしまった時、その秘密を共有できるネット検索エンジンが暴走の手助けになる
良からぬ妄想(侵入思考)に陥ってしまった時、その秘密を共有できるネット検索エンジンが暴走の手助けになる


 自分の意思とはまったく関係なく、突発的に得体の知れない考えに取り憑かれたことのある人も多いことだろう。奇妙なイメージが浮かび、恐ろしい出来事を想像してしまう。

 例えば母親が高層マンションから我が子を落とす場面、歩行者が突然車の前に飛び出す場面、刃物を振り回した人が通行人を次々と刺していく場面などだ。

 これは「侵入思考」と呼ばれるもので、個人の意思や倫理観とはかかわりなく発生する。常に働き続ける脳の副産物であり、説明できない恐怖を呼び覚ます。

 大抵の場合、こうした思考はすぐに消え去る。しかし、強迫性障害(OCD)を患っている人が侵入思考に陥った場合、こうした考えやイメージがひっきりなしに頭に浮かんで離れなくなる。今のところ、これに対する有効な治療手段はない。

 こうした思考はタブー視される側面があることから、配偶者やセラピストに対してこの症状を秘密にしている人が非常に多い。

 それは数年続く場合もあれば一生ということもある。しかし、インターネットの登場により、新しい告白相手が登場する。検索エンジンだ。検索エンジン自体が治療となることはないが、同じような症状を持つ人が自分以外にもおり、そうした人たちがどのような暮らしを送っているのかを匿名で知ることができる。

不安が道理を上回るとき

 ニューヨーク在住のアーロン・ハーヴェイさんに起きたのもこれだ。彼はOCDに起因する重度の不安症を抱えながら20年間過ごしてきた。

 これまで何度も、自分が小児愛者ではないかと怯えたり、自殺する場面を想像したり、鏡に悪魔が写っていたのではないかといった考えが頭に浮かんできた。単なる一過性の思考などではなく、生活を飲み込むほどだった。

 「不安は道理や理屈でどうにかなるものではありません」とハーヴェイさん。

 2014年のあるとき、不安に耐えきれずに「暴力的な思考」で検索して、OCDに関連する侵入思考について説明するサイトを発見した。こうした思考には、暴力、性、宗教にまつわるものが多いのだという。

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心の中だけで起きる強迫思考

 こうした症状はしばしば純粋強迫(pure obsessional)と呼ばれる。この用語が意味することは、頻繁に手洗いをしたくなったり、何かを確認せずにはいられないという肉体的な衝動強迫とは対照的に、心の中だけで起きるということだ。侵入思考を体験する人は、数を数えたり、祈ったり、自己肯定といった精神的な衝動強迫によって嫌な考えを追い払おうとすることがある。

 脳が無作為にタブー視される思考を生み出したときショックを受けることもあるだろうが、OCDの有無にかかわらず、これはごく普通のことなのだという。

 多くのケースでは、侵入思考は滅多に起こらず、不安感を残すようなこともない。しかし、OCDを患う人の場合は、この厄介な思考を脳が定期的に生み出していることに目がいってしまう。そして、それを実行したいという願望が自分の中にあると勘違いしてしまうのだ。パニックに陥り、それを頭から追い払おうとする。だが、そうすればするほど症状は悪化する。

 OCDの原因は不明だが、遺伝や脳機能の差異など複数の要因があるのではないかと考えられている。推定ではアメリカ人の1パーセントがOCDにかかっており、その半分にひどい衰弱が見られるという。

 そんなハーヴェイさんが治療法を発見するうえで大いに役立ったのが検索エンジンだ。彼は匿名性が高く、ネットスラング満載のサイトは他の人に取っても大いに役に立つと確信している。3月、OCDに関する情報をまとめたIntrusiveThoughts.orgを立ち上げた。

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良からぬ思考に取りつかれているのはあなただけじゃない

 自らもOCDを抱えるジョン・ハーシュフィールドさんは心理療法士であり、この障害の治療を専門としている。彼はネットを使った方法に実際に効果があることを直接体験した。

 ハーシュフィールドさんはピュアO(Pure O)という、主に精神的衝動強迫を持つ人の支援を目的とするヤフーグループを運営している。メーリングリストの登録者は2,800人以上おり、患者の家族や研究者も登録できるとはいえ、基本的には全員がOCD患者である。これは安心して自分の考えを打ち明けられる場所をつくりたいというハーシュフィールドさんの考えだ。

 そこでなされる会話は、子供を対象とした性的な思考、神への冒涜、暴力のほか、性的な嗜好や人間関係に関する妄想を中心とするものが多い。

 例えば、新しく母親となった人が子供に危険な事故が起こるという妄想や、自分が子を殺めてしまうのではないかというイメージに取り憑かれることがある。

 「主な問題は、こうした思考が自分の本心なのではないかと思い悩んでしまうこと」とハーシュフィールドさんは話す。

その妄想はあなたの本心ではない

 同グループは、メンバーに対してそれは違うのだということをはっきりと示す。目的とするのは、メンバーが自分のアイデンティティが間違っているという恐怖を明らかにすることではなく、不安を受け入れ、自分への慈しみを育てるよう促すことだ。

 現在37歳のハーシュフィールドさん自身は、10代の頃からOCDにかかっており、早いうちから治療を受けてきた。しかし、真剣に取り組むようになったのは20代後半になってからのことだという。

検索エンジンは薬にもなるが毒にもなる

 回復するにはインターネットが不可欠であった。それは長い間求めていた答えを見つけることができたからではなく、共同体意識を得れるからだという。

 一方で、検索が”毒”になりうることも指摘する。情報やサポートを得る手段ではなく、安心したいという衝動強迫にすり替わることもあるからだ。

 「ネットを始めてから、孤独感が和らぎました。大きな一方を踏み出そうとしていたわけではありませんが、宇宙でたった一人じゃないと知ることができました。この問題を抱えているのは自分だけではなかったのです」とハーシュフィールドさん。

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 ウェンディ・ミュラーさんは、OCDサポート(OCD-Support)というヤフーグループが同様の効果を発揮していることを目の当たりにしている。「信じられない、こんなこと考えているのは自分だけかと思っていた。誰かに話したら精神病院に入院させられて、子供も取り上げられるわ」。彼女によると、これは新しく入ってきたメンバーがよく見せる反応だという。

 ミュラーさんは、監視が決定的に大事だと考えている。ある程度の監視と専門性がなければ、誤った情報が広まり、侵入思考を告白した投稿主にいわれのない批判が集まることだろう。

体験を変える

 ハーヴェイさんも承知しているように、OCDを特定し、理解し、それに対する効果的な治療を得るには多大な労力が必要となる。彼は2014年から心理療法士にかかり始めた。昨年は暴露反応妨害法(Exposure Response Prevention/ERP)という、恐怖に向き合い、体験のストレスを和らげるうえで効果があるとされる手法を試した。

 以来、車を停止するときにシフトをパーキングに入れないで運転するよう努めている。これまでは、歩行者をはねてしまうのではないかという恐怖から衝動的にパーキングに入れていたのだ。また、ヨガや瞑想といった、自身が「実にせわしない」と表現する心を落ち着かせる不安管理スキルも使っている。

 専門家はERPのほかに、一般的な量を超える抗鬱剤を使用することもあるが、ハーヴェイさんの場合は、そのメリットよりも副作用のほうが大きくなってしまった。現在でも侵入思考は起きるが、かなり楽に手放せるようになったという。

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 ハーヴェイさんは、患者が診断や治療について容易に学べるようにしたいと願う一方で、医療系サイトにありがちな超然とした専門家の意見は避けたいと考えている。IntrusiveThoughts.orgの主なターゲットは、13~24歳の若い患者だ。優しい口調で語りかけるよう努め、白黒黄の色調を採用したモダンなデザインで、インスタグラムなどが大好きな人にも魅力的に映るよう工夫してある。ここから利益を上げようとは思っていないそうだが、この手のサイトで起業しようというケースは増えるだろうと考えている。
 
 自分の体験について語り合いたいと願う人は過去数年間で急増しているという。このことが、病気に対する理解を促し、かつて患者の口をつぐませてきた刻印を消し去ろうとしている。セラピスト、治療プログラム、サポートグループ、OCDに特化した組織などの情報が欲しい人は、International OCD Foundation(英語サイト)を確認してみるといいだろう。


via:mashableなど / translated hiroching / edited by parumo
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