金正恩氏が「史上最悪」水害被災地に行けないワケ (2/2ページ)

デイリーNKジャパン

金正恩氏が、どこそこを訪れると日時が決まれば、現地では何ヶ月、何週間も前から準備作業が行われる。道路をきれいにする「道路美化事業」は基本で、稼働が止まっていた工場を、あたかも稼働しているかのように装う「企業所生産正常化事業」も行われる。稼働が止まっていれば、地域や工場の幹部は金正恩氏から叱責を受け、首が飛びかねない。いや、処刑される可能性も出てくる。

実際、金正恩氏は昨年、スッポン工場を現地指導した際、管理不行き届きという理由から工場内で激怒。後に責任者を処刑し、さらにその直前の激怒した動画まで公開したことがある。

おそらく、各地の企業所の責任者は、金正恩氏の「激怒動画」を見ながら「金正恩元帥様がうちの工場に来られたら大変なことになる」と、震え上がったにちがいない。

それでも、最高指導者が被災地を訪れないのは、やはり格好がつかない。当局は金正恩氏の視察の準備作業に入っているが、今度は準備作業が復旧作業に悪影響を及ぼしている。被災現場の瓦礫の下からは、洪水に流されて行方不明になっていた兵士の遺体が続々と発見されているが、軍の幹部は武器弾薬の回収に夢中で、遺体のことは眼中にない。

住民見殺し

金正恩氏が被災地を訪れないことや、当局の復旧を軽視する姿勢に、現地住民や兵士の間では反感が高まりつつある。彼らは「人の命より銃弾の方が大切というのか」「兵士の命は弾丸1発より安い」「戦争になれば我々は奴らの弾除けにさせられる」と、体制に対する不満を露骨に口にするようになっているという。

事故発生の原因からその後の対応の不手際によって、金正恩氏の権威は失墜する一方だ。もしかすると、正恩氏は住民からの「無言の反発」を恐れて、被災地を訪問しないのかもしれない。

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