【不朽の名作】とにかくコロナビールのイメージが強い柴田恭兵主演作「べっぴんの町」 (2/2ページ)
どちらかというと、ハードボイルドというよりは、主人公が頭と足を使って事件の真相に近づいていくので、2時間サスペンスドラマなどにストーリーの流れとしては近いだろう。が、一応ハードボイルド路線も捨てきっていないので、唐突に酒場での格闘シーンや、本編にはさほど関係も深くない、誘拐強姦事件の解決などを挟むので、話が飛び飛びになりがちなのが難点だ。オチが一応どんでん返しのようになっているのだが、それほど印象に残らない。注意してシーンを追わないと「え、終わり?」と感じてしまうほどあっさりしている。この作品の10年後くらいに問題化した、援助交際にスポットを当てている点はそれなりに斬新な内容ではあるが。派手な印象のある80年代アクション作品の中ではかなり穏やかな部類だ。他には阪神・淡路大震災以前の神戸の町並みを確認できるという点で、この作品は今となっては貴重かもしれない。
なお、作中に登場し、主人公が愛飲している「コロナ・エキストラ」ビールの宣伝映画としても、この作品は非常によく出来ている。プロダクトプレイスメント(劇中広告)なのかなこれ? 主人公は自宅でも事務所でもバーでも、コロナにライムを入れて飲む。その姿がかなり印象に残る。今でこそ、洒落たカフェや飲み屋には必ずある、海外ビールの代表格のひとつで珍しくもなんともないが、バブル時代の当時、ちょっと違う感を出すにはちょうどいい飲み物だったのかもしれない。酒が映画の雰囲気作りに大きな影響を及ぼした作品として、ジョニー・デップ主演の『フロム・ヘル』があるが、この作品でも同じく、作品の雰囲気作りにひと役かっている。
『フロム・ヘル』は19世紀後半の切り裂きジャックにおびえる、ロンドンの怪しげな空気を高めるために、アヘンと西ヨーロッパでは20世紀初頭に禁止酒となったアブサンが効果的に使われていた。同作では、主人公のハードボイルド作品らしからぬ、爽やかな印象を出すために、普通ならばバーボンやらスコッチを飲むカットで、コロナが上手い使われ方をしている。コロナはいかにもなビールという感じの味ではなく、さらっとしたビールなので、主人公の性格付けをするにはちょうど良い酒なのだ。
内容としては、所々物足りない部分もあるが、それでもコロナの演出や、役者の魅力を見せる作品としては、かなり良い部類ではないだろうか。主人公のコートのカラーとデザインが、時々バスローブのように見えてしまうのは、ちょっと変な感じだが…。80年代特有の、変にスレた、今となってなってはダサく思われてしまうような空気感やセリフ回しも、ハマれば楽しいかもしれない。
(斎藤雅道=毎週土曜日に掲載)