いったい何を学ぶの? 2016年度から始まった日大の「危機管理学部」とは

みなさんは、日本大学の「危機管理学部」という学部を知っていますか? あまり聞き慣れない名前の学部ですが、実は2016年4月からスタートしたばかりのできたてほやほやの学部。名前を聞く限りでは「危機管理を学ぶ学部」だと察することができますが、具体的にはどういったことを学ぶ学部なのでしょうか? 今回は、日本大学危機管理学部次長・福田充教授に、危機管理学部で学ぶ内容や、創設されたきっかけなどのお話を伺いました。
■「オールハザード・アプローチ」の視点でさまざまな危機管理を学ぶ
――この危機管理学部はどんな学部なのでしょうか?
福田教授 危機管理学部は、法学・政治学・社会学を中心とした文系でのアプローチで、社会で発生するあらゆる危機に対応できる「オールハザード・アプローチ」のスペシャリストを育成する学部です。
・自然災害や原発事故などの対策を学ぶ「災害マネジメント領域」
・犯罪や治安、またテロなどの対策を学ぶ「パブリックセキュリティ領域」
・戦争、紛争、難民といったグローバルな問題に取り組む「グローバルセキュリティ領域」
・情報流出やサイバー攻撃など情報管理や対策を学ぶ「情報セキュリティ領域」
この「4つの柱」で構成されており、他にも新型インフルなどのパンデミックなど、世の中で起こるさまざまな危機に対する「総合的な危機管理」を学ぶことができます。本学の他にも理系の危機管理学部は他大学にすでにありましたが、文系では日本で初めてになります。
――何か一つの分野に特化させているのではなく、複数の危機に対応できる人材を育成する理由は何なのでしょうか?
福田教授 企業に勤めていたとしても、自治体や政府にいたとしても、地震が起これば地震に対応しないといけませんし、テロ事件が発生したら対応しなければいけません。つまり危機管理を行う人間は、「危機を選ぶこと」はできないのです。なので、あらゆる危機に対応できる「スペシャリスト」を育てることが求められてきています。
――社会的にも、幅広くカバーできる危機管理の人材が必要とされているのですね。
福田教授 社会科学的な面では、あらゆる危機に対応できるオールハザードが求められてはいるものの、「学問」としては明確に整備されていないのが現状です。そこで日本大学で危機管理学部を設立し、体系化しました。
■日本大学の「起源」を受け継いでいる危機管理学部
――設立のきっかけは何だったのですか?
福田教授 きっかけといいますか、実は日本大学と危機管理学は深い関わりがあります。本学の前身である日本法律学校の学祖・山田顕義は、幕末の長州藩、吉田松陰の松下村塾での門下生として有名ですが、吉田松陰自身が実は軍学者で、現在で言うところの「安全保障」などの危機管理の専門家でした。弟子の山田顕義も軍人として活躍しましたが、欧米で法律を学んだことで「日本の近代化に必要なのは軍ではなく法制度である」ということに気付き、その後内閣制度発足後の初代司法大臣に就任しています。
――吉田松陰も山田顕義も「危機管理」というものについて研究していた、ということですね。
福田教授 つまり、吉田松陰と山田顕義がやってきた軍学や兵学、またシビリアンコントロールなどの「法に基づいて安全保障や危機管理を確立していく必要がある」という考えは、日本大学のオリジンであり起源なのです。それを受け継いだのがこの危機管理学部です。
――危機管理学部はどのような経緯で設立されたのでしょうか?
福田教授 新学部開設について具体的な話が出たのが2010年頃です。日本大学は、2019年に創立130周年を迎えるのですが、それを記念する事業の中で日本大学に求められているものは何かが検討された結果、危機管理学部とスポーツ科学部の開設が決定されました。
■大学院レベルの専門性の高い学習内容
――先ほど4つの柱に基づくカリキュラムという説明がありましたが、具体的な授業内容について教えてください。
福田教授 4つの研究領域以外には歴史や英語、コンピューターなどの総合教育科目と、危機管理を行う上で重要な憲法や国際法などを学ぶ法学系科目があります。他にも政治学や社会学など、学習内容は多岐にわたります。
――専門性の高い授業が非常に多いのですね。
福田教授 専門性は意識しています。4つの研究領域についても、パブリックセキュリティ領域に関しては警察大学校に次ぐレベルの内容になっていますし、グローバルセキュリティ領域も防衛大学校に次ぐレベルの充実した内容です。災害マネジメント領域についても、ここまで専門的に学べる大学はわずかしかないと思います。情報セキュリティ領域についても、文系の法学的アプローチで教えるのは初めてだと思います。
――例えば演習や実習といった授業もありますか?
福田教授 基本的には座学が中心ですが、1年次から演習系の少人数ゼミを展開しています。1年次の演習は担任制ですが、2年次の基礎演習から師事したい教授を選ぶことができます。その場合は、教授によっては、街でアンケート調査を行うなど、フィールドワークを行うケースも出てきます。
――専門性の高い授業が数多くありますが、他の大学ではなかなか見られない授業もありますか?
福田教授 例えば情報セキュリティ領域で学ぶ「デジタル・フォレンジック」の授業は日本で初めてではないでしょうか。またグローバルセキュリティ領域の「ストラテジー」「インテリジェンス論」「国際テロリズム論」といった授業も、一般の大学では教えていないものだと思います。
※デジタル・フォレンジック……犯罪捜査などで、電子機器に残る記録などを分析する科学的調査手法
――一般的な大学とは思えない高度な学習がそろっていると……。
福田教授 そうですね。そしてそれらを危機管理に融合させていくのは非常に難しいアプローチですが、学びやすいよう、吸収しやすいようなアプローチで学習することができるようなカリキュラムになっています。
■将来のビジョンを明確に持った学生が多い!
――スタートして約半年ですが、1年目の手応えはどうですか?
福田教授 300人定員で募集しましたが、専門性の高い学部なので当初はどれくらいの受験生を確保できるか不安でした。しかし受験生も非常に多く競争率も高かったです。
――1期生である学生たちの反応はどうですか?
福田教授 「危機管理」という専門的な学部を、創設1年目で受験するということで、意識が高いといいますか、「将来のビジョン」がはっきりしている学生が非常に多いのが特徴です。例えば開校式で学生代表としてあいさつをした学生は、「国際機関で難民問題を解決したい」という目標を持って入学していますし、他大学で原子力工学を学んでいた学生が、「原発政策と災害対策を学びたい」ということで、本学に入り直したというケースもあります。
――目的意識をしっかりと持った学生が多いと。
福田教授 他にも警察官や海上保安官を目指している学生などもいます。もちろんそうした専門的な職業だけでなく、例えば一般企業を志望していても、そこで情報セキュリティの仕事に就きたいなど、明確な仕事のイメージを持っています。
――「志」をしっかりと持っている学生が多いのは、教える側としてもうれしいことですね。
福田教授 やはりどんなに勉強ができたとしても、「ハート」と「志」がないと危機管理というのは難しいと考えています。強い気持ちがあれば、大学に入って1から勉強しても十分にやれると思います。ですので、こうした目的意識がはっきりとした学生が多く入ってきてくれたのはうれしい限りです。
――最後に今後の展望を教えてください。
福田教授 まずは今の1期生が幅広い分野で活躍できるよう、しっかりと育てていくというのが第一です。そして次、その次と入ってくる学生たちも同様に送り出すことですね。また、大学院や研究所の設立、社会人向けの教育プログラムの構築も検討しています。他にも自治体や企業と協力して、危機管理の向上や研究などを行う「危機管理のプラットフォーム」として機能したいと考えています。
――たしかに社会人の視点でも魅力的な内容です。今後は学生だけでなく、社会人層にも危機管理の考えがより浸透していくといいですね。本日はありがとうございました!
さまざまな国際問題やテロ、そして昨今大きな問題となっている情報セキュリティなど、時代のニーズに非常にマッチした内容が学べる日本大学の危機管理学部。福田教授が述べられているように、一般的な大学とは異なる専門性の高い科目がそろっていますが、危機管理について学びたいという明確なビジョンがある人には、これ以上ない学部だといえるでしょう。
日本大学 危機管理学部の詳細はコチラ
⇒http://www.nihon-u.ac.jp/risk_management/
(中田ボンベ@dcp)