「あんた達のせいで皆死んだ」金正恩体制に向けられた庶民の怒り (2/2ページ)

デイリーNKジャパン

水害で夫と娘を失った女性が、職場に出勤しないことをとがめた朝鮮労働党の宣伝扇動部幹部に向かって「あんた達は何もしてくれなかったのに、出勤しろだって?毎朝うるさく朝の動員に出てこいと触れ回っていた放送車が、水害が起きることを知らせでもしたのかい?そのせいでみんな無駄死にしたんだよ!」と激しく抗議したのだ。

女性は続けて「雨があれだけ降って、堤防が崩れたにも関わらず、誰か知らせてくれたのかい?みんな家の中にじっとしていて死んだのよ!それともあんた達は『高い所』に住んでるから、私たちみたいな下々の人間がどうなったって関心も無いんだろう?」とまくしたてたという(実際に幹部たちは住宅密集地ではなく、丘の上などに暮らす場合が多い)。

その後、抗議を行った女性は精神錯乱と診断され、地元の病院に入院しているという。公的な場所で労働党の施策をあからさまに批判する行為は、本来ならば罪に問われるところだ。当局は、前例どおりに女性を処分できなかったことで、半ば自らの非を認めたも同然と言えるだろう。

この事件の際、女性が金正恩党委員長を名指しで批判したという情報はない。さすがにそれをやってしまうと、殺されずには済まなかったはずだ。しかし言葉には出ずとも、北朝鮮当局の権威に対する批判は、結局は正恩氏に向かう。そして、そのような無言の批判は、冒頭の放火テロのような「無言の反抗」に化ける可能性をはらむ。

もしかしたら、そのことにいちばん敏感になっているのは、当の正恩氏かもしれない。韓国の国家情報院(国情院)は10月、国会情報委員会の国政監査で次のように説明している。

「金正恩党委員長は、身辺に危険が及ぶのではないかという不安感から、行事の日程や場所を急に変更したり、爆発物、毒物探知装置を海外から取り寄せて警護を大幅に強化したりしている」

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