金正恩氏のお出掛けを減少させた「トイレ問題と生命の危機」 (2/2ページ)
とはいえ、民主主義国家である韓国が、国民や議会のコンセンサスもなしに、失敗すれば核で反撃されるリスクの高い作戦導入に突き進むことは難しい。現状では斬首作戦は、あくまでも金正恩氏に心理的圧力をかけるレベルだ。しかし、彼にとっては相当な効果があり、それが今年の公開活動の回数激減に結びついていると筆者は見ている。
この見方を裏付けるように、韓国の国家情報院(国情院)は、「金正恩党委員長は、身辺に危険が及ぶのではないかという不安感から、行事の日程や場所を急に変更したり、爆発物、毒物探知装置を海外から取り寄せて警護を大幅に強化したりしている」と分析した。
さらに「お出かけ」減少の意外な理由として挙げられるのが、金正恩氏のプライベートにかかわる問題だ。
一見、独裁者でやりたい放題と見られがちな正恩氏。しかし最高指導者ゆえに、生活上、不便さを強いられることも多い。その端的な例が「トイレ」。現地指導の際、一般のトイレを使用できないために、専用車のベンツに「代用品」を載せて移動しているという。
一般庶民の無言の反発と米韓による斬首作戦。そして移動するにあたっての多大なるストレス。こうした理由で、ただでさえ重い金正恩氏の腰はさらに重くなったようだ。とはいえ、ここに来て金正恩氏にもやっと反撃の姿勢を見せつけるチャンスが訪れた。11月から金正恩氏の軍関連の公開活動が急増しているのだ。
この時期、韓国では朴槿恵大統領が「崔順実ゲート」をめぐり窮地に陥った。大方の予想を裏切って米大統領選ではドナルド・トランプ氏が当選した。朴政権の機能は停止し、次期米大統領の対北朝鮮政策は未知数だ。そして、北朝鮮に最も圧力をかけてきた米韓両国に政治的空白が生じているこの次期、金正恩氏は大胆な行動に打って出る。
朴大統領の弾劾決議案が可決された2日後の11日、北朝鮮国営メディアは金正恩氏が韓国大統領府(青瓦台)の襲撃、いわば「朴槿恵暗殺作戦」を想定した特殊作戦の訓練を指導したことを報じた。報道のタイミングからして職務停止となった朴大統領や現韓国政権に対する心理的圧力だろう。
韓国政治の混乱にあわせた「朴槿恵暗殺作戦」の公開は、劣勢を強いられてきた金正恩氏の本格的な反撃ののろしなのだろうか。それとも、生命の危険からほんの少しだけ解放されたと感じる正恩氏の精一杯の抵抗なのか。いずれにせよ、正恩氏の次の一手が気になる。