【不朽の名作】天草四郎役の沢田研二が印象的! 80年代角川映画でも傑作の一つ「魔界転生」 (2/2ページ)
十兵衛を待ち、炎の中でたたずむ宗矩にはグッと目をひきつけられる。正直その後の天草四郎との対決が霞むほど。
魔界衆の1人で、唯一の女性である細川ガラシャ役の佳那晃子も嫉妬に狂った魔女枠としてストーリーに厚みをつけている。ちなみに、原作では魔界衆に女キャラはいないが、人間時代の夫である細川忠興へのこじらせた想いは、ある意味天草四郎の思想に一番近く、他の魔界衆を食うレベルのインパクトを残しており、作品に異常なほどマッチしている。あまりに狂ったキャラすぎて、よくこれ細川家からクレームがつかなかったなレベルだ。ガラシャと天草四郎が幕府転覆のための策謀をめぐらす場面は、どのシーンもおどろおどろしくなっており、時代劇の新しい可能性に挑戦した同作らしい印象的な場面が多い。他の魔界衆は魔人化したとはいえ、妖術の類は使わず、正攻法でくるので、時代劇らしかぬハチャメチャな部分はこの2人が担っているといってもいいだろう。あの「エロイムエッサイム」という呪文と、ちょっとショボイSFXはなんとかして欲しい気もするが。まあ、当時を考えたら仕方ないレベルではあるが。また、時代劇でやたら生首を出したがるのも当時の角川映画の特徴だが、今作でもそれは結構出てくる。冒頭の原城のさらし首の多さといったらもうやりすぎレベルだ。
とはいっても、話の内容としては若干詰め込みすぎな部分もある。前半までは魔界衆の仲間集めに大きく尺が裂かれているため、十兵衛が殆ど出てこない。そもそも徳川家綱の治世が始まった頃は、十兵衛とか宗矩は死んでないか? とか原作を改変した影響での、史実的な意味での細かいツッコミ所にも、基本この作品ノータッチである。それでも観ていて楽しい作品に仕上がっているのは深作欣二監督の力によるものが大きいだろう。それぞれのキャラの見せ場がちゃんと用意されている。プロデューサーの角川春樹と原作の面白さを伝え合ったという話があり、どうすれば良い娯楽作になるのかよく吟味されている感がある。
とにかく大筋のストーリーさえなんとなくわかってれば、観れてしまう作品なのだ。「俺の考えがこうなんだから仕方ない!」と濃すぎるほどキャラ立ちした天草四郎が強引に話を引っ張ってくれる。その天草四郎の行動に、十兵衛は異をとなえる訳でも、同情する訳でもなく、自分の仕事を淡々とこなし、父親である、宗矩が仕損じた件にケジメをつけていく。後半近くまで天草四郎が中心で、バトルパートと策略パートのバランスが非常に良い。丹波哲郎演ずる村正から魔剣村正を作ってもらい、十兵衛が表に出てきたら、もう後はバトルだけ。ひたすらアクションのてんこ盛りで、視聴者を飽きさせない。
(斎藤雅道=毎週土曜日に掲載)