北朝鮮で数千人死傷の「毒ガス事故」…金正男氏事件で注目の化学兵器か (2/2ページ)
翌朝、市内の空には黄色い雲のようなものが浮かんでいた。何気なくその下を通りかかった人が次から次へと倒れた。
当時、北朝鮮に住んでいて、事故の翌日に順川に入ったデイリーNKのチェ・ソンミン記者は、その惨状を目撃していた。順川市内の病院はもちろんのこと、隣の平城(ピョンソン)市の病院まで、足の踏み場もないほど患者で溢れかえった。中には平壌まで搬送された人もいた。
結局、数百人が死亡し、数千人が負傷した。当局はこの事故のことをひた隠しにした。タンクの中身や黄色い雲の正体は、今に至るまでわかっていない。
北韓戦略情報サービスセンターのイ・ユンゴル代表が2011年に韓国の週刊誌、時事ジャーナルに語ったところによると、市内の順川石灰窒素肥料工場の「日用職場」(軍需品生産部署)ではシアン化水素(青酸化合物)が製造されている。
これはナチス・ドイツがユダヤ人虐殺に使った猛毒の物質だ。しかし、密閉されていない空間ではすぐに飛散してしまう特性を持つため、順川の事故の原因は、別の物質だったとも考えられる。