【不朽の名作】あの仲間由紀恵も声での出演をしていた「機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-」 (2/2ページ)
後の展開でこの死は、とある陰謀のための隠蔽工作と判明し、その真相と2人の行方を追う展開が、ナデシコBの艦長となったルリの視点で描かれる。
特にアキトは今回、重い使命を背負っているため、テレビシリーズと大きく性格の変わったキャラとなっている。この部分はテレビシリーズを観た人の方が違和感を感じるところだ。それまでの過程を飛ばしているので、キャラの成長を感じる機会が全くなく、いきなりダークヒーローになってしまっている。以前までのキャラの魅力の一つだったバカノリが全くない。この辺りでテレビシリーズが好きな人には賛否が分かれる部分と言える。加えて重々しい場面で突如に挟まれるギャグノリの設定などとの温度差がテレビシリーズ以上に激しく、下手をすると混乱するレベルになっている。所々明るい雰囲気で取り繕っても、正直どうにもならない。
重い展開を重視した割に、結局最後は犠牲は最小限に、あっさりと終わってしまうのもこの作品の残念な点だ。それなら従来のバカ展開多めでも良かったのではと思うほど。しかも続編の含みをかなり残した中途半端ともいえる終わり方だ。まあ、ユリカが合流した時点でおそらく普段のバカノリに戻ってあっさり解決するだろうということは続編がなくてもなんとなく感じられはするが。
結果的にこの作品で一番のみどころは、実質的な主人公であるルリになる。元々、エヴァの綾波レイと同じく口数が少ないヒロインとして当時は比較されることも多かったが、ルリの方が皮肉などを言うなど、テレビシリーズから感情の揺れ幅が綾波よりは大きい。容姿の他に、そこがこのキャラの大きな魅力の一つだった。そして、この作品では、元々属性に艦長としての責任感もありつつという、より意思の強い性格となっており、さらにルリと同じく遺伝子操作によって生まれた少年でナデシコBの副長補佐、マキビ・ハリの面倒を見るという姉属性も追加され、また違った魅力を見せる。これらの新規の設定に加え、従来通りの皮肉屋な所も残っており、振り切りすぎて、まるでルリを愛でることに特化した作品と感じてしまうほどだ。テレビシリーズからのファンが見たい部分をしっかりと押さえており、さらに劇場版からの鑑賞者にもキャラの魅力をわかりやすく伝えている。ルリの視点から話を展開するという方法は大成功だったと言えるだろう。キャラの存在感だけで作品を良い方向に引っ張っていけるという部分では。
あと、戦闘シーンの動画はかなり力が入っている。当時のアニメ映画の盛り上がりを考慮してもこのレベルの描き込みなかなかだろう。この作品でアキトの乗機となっているブラックサレナが登場するシーンの演出は、どれも印象的だ。この戦闘作画だけでも観ていて楽しい作品かと。
(斎藤雅道=毎週土曜日に掲載)